【鷺沼駅再開発】向丘出張所の機能強化について〜行政手続きサービス編〜

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みなさん、こんにちは。川崎市議会議員(宮前区選出)の矢沢孝雄です。
 
本ブログでも度々取り上げてきました鷺沼駅周辺再編整備について、今回はその中でも「向丘出張所の機能の検討」に絞ってお伝えしていきたいと思います。
鷺沼駅再開発に関心の多くの方がご存知の通り、平成31年3月末に公表された市の基本方針における5つの基本的な考え方の中には、地域バランスを考慮した「向丘出張所の機能の検討」という項目が含まれています。

 

この項目は、当初の素案段階では盛り込まれおらず、議会報告段階で向丘地区から出ていた意見要望を当局にお伝えしてきた結果、追加された重要な項目となります。そして現在、その基本的な考え方に則って、「むかいがおか出張所×まちづくり アイデアカイギ」が複数回に分かれて行われており、出張所のあり方に関する市民中心のワークショップや、各種地域団体へのヒアリングなどが行われています。

 

当方自身はこれまで、「向丘出張所の機能強化」をこの鷺沼駅再開発と並行して進めていかなければならない。向丘地区においても地域バランスを最大限考慮した取組を進めていき、地域を交え議論していかなければならないという主張を議会で進めてきました。
一方で基本方針よりもさらに深い、では具体的にどういった機能を強化?あり方を考えていくべき?というところまでは発していませんでした。
 
それは、現在市が主催して地域意見を集約していく為の取組が「アイデアカイギxまちづくり」をはじめ、まさに現在進行形で進んでいる為です。ですが、出張所機能について様々な方から、矢沢自身の考えを聞きたいという声を頂いている為、現段階における個人的意見を書かせて頂いています。
本記事をご覧いただいた方におかれましては、当方の意見も含めこういった意見もあるという風に受け止めていただき、参考になればと考えています。

 

市の基本方針における向丘出張所と議会での議論について

平成31年3月末公表の市の基本方針「鷺沼駅周辺再編整備に伴う公共機能に関する基本方針」では、①〜⑤ある基本的な考え方の中で、向丘出張所について、以下の事が記載されています。

 

⑤地域バランスを考慮した区全体の機能向上(向丘出張所の機能の検討)
 
・向丘出張所については、地域バランスを考慮した区全体の機能向上という観点や、本市の関係施策の位置付け・検討状況を踏まえ、「身近な活動の場」や「地域の居場所」としての活用など、地域の皆様とともに地域ニーズや課題を把握・整理し、機能のあり方について検討

 

そして議会では、基本方針で記載のない向丘出張所の機能検討スケジュールや、ソフト・ハード施策の考え方について伺っており、当時のやり取りを記載したものが以下記事となります。

一質③鷺沼駅周辺再編整備について〜災害対策・向丘出張所・市民館・図書館は?〜

2019.07.09

 

少し内容抜粋をすると、令和元年6月議会において、当方は「区役所・市民館・図書館の移転と、跡地のあり方検討という概ね10年という事業全体スケジュールと並行する取組みと考えると、ソフト施策だけの取組みでは時間軸が長過ぎる点や、地域ニーズや課題の把握の結果、ソフト施策だけでなく、施設そのもののハード施策も含めた検討が進む可能性もあるのか?」といった点について市民文化局長に伺っています。

 

市民文化局局長からは、
「出張所等の庁舎建築物につきましては、「かわさき資産マネジメントカルテ」において、目標耐用年数を60年以上とすることを基本としておりますので、向丘出張所においても経過年数に応じて適切な対応を図りつつ、出張所機能の検討により、建物の利用環境の改善が必要とされる場合などについては、順次実施していくことも視野に入れながら、検討してまいりたいと考えております。」と答弁がありました。

 

つまり、「かわさき資産マネジメントカルテ」の考え方に基づきながらも、地域ニーズや課題の把握を行い、検討次第ではハード施策もあり得るという事です。

 

出張所における窓口サービス機能のあり方

 向丘出張所の今後のあり方を考える上では、どういった機能を具体的に充実させていく事が大切なのか。ソフト施策だけでなく、ハード施策も検討次第によっては可能性があるとのことですが、先ず重要なことは「具体的な機能」だと考えています。

 

様々な地域意見を頂くわけですが、「区役所に行かなくても済むように一通りの手続き関連はすべて出張所で出来るようにして欲しい」といった意見も多くあるように思えます。向丘出張所に限らず、市全域の出張所では現在、窓口サービス機能としては「証明書発行業務」のみとなっています。

 

証明書発行ですので、住民票であったり、戸籍であったり、印鑑登録証明書だったりの書類を発行する業務となります。平成21年3月策定の区役所と支所・出張所等の窓口サービス機能再編実施方針において、出張所での届出業務は廃止され、区役所に一本化されました。証明書発行業務については、日常的に利用頻度が高い為、引き続き出張所でも行っていく方針が当時示されました。

 

平成21年度当時の窓口サービス利用状況についてのデータを確認したところ、以下のような数字となっていました。
 
「向丘出張所」
・届出取扱件数:24,527件(平均約102件/日)
・証明書発行件数:39,873件(平均約166件/日)

・合計:64,400件(平均約268件/日)

 

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区役所区民課・支所区民センター・出張所の各窓口における各種手続き件数(平成21年度)、出典:川崎市役所

※クリックするとPDFファイルが開きます。

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現在は、皆さんもよくご存知の通り、マイナンバーカードを利用すればコンビニで以下のような証明書発行がどこでも出来るようになりました。当方も証明書発行が必要となった際は、殆どコンビニで行っています。時間・場所の制約が無い為、非常に便利でよく活用させて頂いています。

 

【参考:マイナンバーカードを用いてコンビニでも出力可能な証明書※川崎市】
住民票の写し ○
住民票記載事項証明 ○
印鑑登録証明 ○
各種税証明 ○
戸籍 ○
戸籍(本籍地) ×
戸籍の附票 ○
戸籍の附票(本籍地) ×

 

その後、全市的に支所、出張所で取り扱う証明書発行手続き件数は、右肩下がりで減少。
証明書発行件数は平成19年度実績では1ヵ所の1日平均は約224件だったものが、平成30年度実績では、向丘出張所では1日平均75件にまで減少しています。

 

支所・出張所取扱件数推移 ※平成23〜24年度頃で、届出業務が区役所に一本化されました。

※クリックするとPDFファイルが開きます。

 

今後は行政サービスのデジタル化が急速に進んでいく

 人口が増え続けている本市にも関わらず、取扱件数が右肩下がりとなっているのは、出張所から届出業務が無くなった為と考える方もいるかもしれませんが、確かにその要因も大きいのですが、証明書発行業務自体がコンビニでも発行可能となった事も大きな要因だと考えています。

 

 では、届出業務とは一体どういったものなのでしょうか?一般的な届出業務を以下に記載すると、

 

【参考:一般的な届出手続き (※左:ライフスタイル、右:想定される手続き)】
出生:出生届、妊娠届(母子健康手帳)
子育て:児童手当、小児医療費の助成、予防接種・乳幼児健康診査、保育所入所、子ども支援・相談、小中学校の転入学手続き
成人:国民年金への加入、印鑑登録
就職:国民健康保険資格喪失届、国民年金資格喪失届
結婚・離婚:婚姻届、離婚届
転居:住所異動の届出、印鑑登録、戸籍の届出、小中学校の転入学手続き、国民健康保険資格取得・喪失、国民年金の住所変更
高齢者:国民年金への任意加入、介護保険・介護予防の手続き等
死亡:死亡届、埋火葬許可申請

 

市民のライフステージに応じての届出書類が主であり、日常的に、頻繁に手続きを行う類のものではないことがわかるかと思います。加えて、政府も一丁目一番地に「行政デジタル化の推進」を掲げており、川崎市もすでにほぼ全ての行政手続きのデジタル化・オンライン化に向けた取組に着手しています。

 

直近、令和2年12月議会における市長答弁を以下にまとめさせて頂きます。

 

 Q.市長は本定例会冒頭の提案内容説明において、「令和4年度までの原則オンライン化の実現を目指して作業をしている」と表明した。その進捗状況及び課題を伺う。また、原則ではなく100%の実現が不可能なことなのか、決意を伺う。

 

 A.(市長)新型コロナウイルス感染症の影響による社会全体の行動変容が進む中で、非接触を念頭においた市民サービスの実施と利便性の向上を目的とした手続きのオンライン化は、非常に重要。手続きの中には、対面の審査が必要なものなど、すべてをオンラインで完結することが出来ない場合もあるが、そうした課題を一つ一つ検証し、できる限り多くの手続きをオンライン化できるよう、職員意識改革を図りながら、スピード感を持って取り組みを進めていく。
 (総務企画局長)今年7月に実施した庁内調査においては、約2,500の手続きのうち、約半数が対面の審査や押印、証拠書類の添付が必要などオンライン化に向けた課題があるという回答になっている。このうち、押印については、今年度中に押印廃止の指針を定め、法令規定以外の押印廃止に向けて取組を進めていく。
 また、オンライン化については、先ずは現時点で署名や押印を必要としない手続き等を対象に、今月中に実証実験を開始dし、市民にも利用していただきながら効果を検証していきたい。

 

令和2年12月議会、第6回定例会代表質問のダイジェスト的なものは以下記事からご覧いただけます。

第6回定例会代表質問より〜鷺沼駅周辺再編整備、事業計画検証へ〜

2020.12.05

 

向丘出張所における行政窓口サービスに対する個人的見解

 色々と記載をしてきましたが、令和3年現時点では未だ届出業務は直接窓口方式となっています。直接区役所窓口に行かなくては対応できません。郵送やインターネットで行えるようになるには、本人確認手法をはじめ、様々な課題があります。ですが今では、銀行口座の開設に関しても、ネット銀行を始めとして「本人確認」は書類の郵送だけとなっています。進んでいるところだと、すべてがインターネット上で最後まで開設可能となっている時代です。
徹底したセキュリティ、段階認証確認などは必要だと思いますが、手続きだけをする為に役所に行くというは減っていくのが目指すべき姿であり、その分を困っている市民に対する相談機能や福祉機能、地域に直接出向く機能の充実に向けて頂きたいと考えています。

 

一般的な届出+証明書発行等の行政サービス機能は、ICTを活用し、どこにいても、誰でも、利用可能な社会が進むことが予想されますが、一方で、デジタル化に対応出来ない方々、不慣れな方々等、デジタルデバイド対策は必須です。

 

例えば、ICTコーディネーター・サポーター的な役割の職員を設置し、行政PC端末を操作する市民手続きのサポート対応に特化してもらうのも良いかと思います。また、様々な手続きにマイナンバーカードが必要な時代が来ることを見据え、現在区役所でしか行えないマイナンバーカード発行受付・受取業務は、カード普及の為にも出張所にあっても良いかもしれません。

 

今後の「向丘出張所における行政サービス機能」を考えた際、本当にそこに、届出+証明書発行+諸々といった区役所同等の行政手続きの機能を行える体制が”物理的”に必要なのでしょうか。窓口サービス提供体制を支所や出張所においても、市民が必要なすべての窓口サービスを提供するとなると、庁舎の大規模改修工事、駐車場確保、用地取得、職員増等に伴う人件費など、多額な財政出動が必要となります。繰り返しになってしまいますが、この物理的にすべてを用意するという壁が、ICT社会、行政のデジタル化を進めていくことで突破出来ると考えています。
 
さらに庁舎自体の改修は結果としてあっても良いかと思いますが、それは前述したとおり、地域が求める「具体的な機能」がまとまってからだと思います。個人的には、行政手続き、窓口サービス機能を拡充するために、庁舎を大規模改修するというよりも、さらに限られた敷地や資源を有効的に使える機能が具体的にまとまり、それを実現するためのハード施策というのが流れではないかと個人的には感じています。

 

「向丘出張所における行政サービス機能」の観点に絞って書かせて頂きましたが、以外の機能(住民交流スペース、図書館、多目的に利用できる会議室)についても、想いを持っていますが、地域の要望、意見が第一です。寧ろ、こういった従来の区役所”以外の機能(地域交流、生涯学習等)”を充実させて行くことが求められていると感じています。

 

引き続き、様々な地域意見を伺うのと同時に、アイデアカイギなどを議会活動の参考にさせて頂きたいと思っています。
  
今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 

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追伸:緊急事態宣言を考慮し、次回アイデアカイギは延期となっています。
令和3年2月6日(土)に予定しておりました、第3回アイデアカイギは延期とさせていただきます。
今後の日程等につきましては、決定次第改めてお知らせいたします。
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※向丘出張所で行われている「アイデアカイギ」の様子


ABOUTこの記事をかいた人

宮前区選出、川崎市議会議員(自由民主党) A型/乙女座/丑年 菅生小・中学校→法政二高→法政大学卒業 2008年4月伊藤忠テクノソリューションズ入社 2014年7月に政治活動に専念する為、同企業を退社 2015年第18回統一地方選挙において初当選。現在二期目。 趣味:剣道四段、空手二段、書道(毛筆三段、硬筆二段)

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