緊急経済対策「川崎じもと応援券」がなぜ問題なのか

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みなさん、こんばんは。川崎市議会議員(宮前区選出)の矢沢孝雄です。
 
今回は、前回記事に引き続き、川崎市緊急経済対策の中でも特に議論の多い「川崎じもと応援券」、プレミアム商品券事業について、取り上げていきたいと思います。本事業においては、関心の高い方からの質問も頂いております。個別に返信が行き届かないことをお詫び致しますが、すべてのご意見をしっかりと読ませて頂いており、自身の意見の参考にさせて頂いています。
 
さて、川崎じもと応援券事業についてお話をしていく前に、いくつかの前提となる事実を共有させて頂きたいと思っています。過去にも当方ホームページで掲載している内容と重複することもありますし、本記事の中でも参考として添付していますので、詳細内容を知りたい方については時間のあるときにでも読んで頂ければ幸いです。
 
川崎市緊急経済対策についての記事は今回で③本目となります。これまでの内容については、以下から参照下さい。

 
それでは、宜しくお願い致します。
 

川崎市の財政状況と政策選択

  

全20政令指定都市中、最も高い財政力指数

 国が規定している基準財政収入額と基準財政需要額との計算で算出される「財政力指数」では本市は全国政令指定都市で1位。国から見れば、川崎市は需要額と収入額が見合った財政運営上、国からの交付金が不要な自治体にされてしまっています。この国が決めている「財政力指数」に加え、国のルールに沿って積み立てを続けてきた「減債基金残高」を根拠に、川崎市は財政豊かなのだから、もっと福祉充実に予算を回すべき!!と一部の政党が声高に主張をしていますが、見解の相違があるところです。
 さて、これらは、本当に財政が豊かな証拠なのでしょうか。
 将来の市債返済の為に積み立ててきたお金を、「もっと切り崩して社会保障に充てるべき!」と言うのは国のルールからも逸脱しています。安易に将来を担う世代へ重荷を背負わせる結果に繋がることは避けなければならないのが、当たり前の考えだと私は思います。

  

普通交付税の不交付団体は実際はデメリットしかない

 交付税、交付税と言うけど、そんなに多くの金額が国から地方に交付されているの?と思うかもしれませんので、川崎市を含めた普通交付税の令和元年度交付額ランキング※総務省ホームページ掲載資料を以下に示します。
クリックでPDFがご覧いただけます。
 

総務省報道発表資料から当方が作成

   

普通交付税0によって続く実質赤字の財政運営

かなりの金額を動いていることがわかるかと思います。
単位は千円ですので、1位の札幌市で1,000億円以上、お隣横浜市で約218億、交付税有りの中で最も少ない金額だとしても、さいたま市の約50億円。そして、川崎市の0という数字が物凄い存在感。。。
 
この数字が表しているものは、川崎市は国からみて政令指定都市の中で最も基準財政収入額と需要額が釣り合っているということです。ですが、本当に横浜市よりも優れた市民サービスを享受していると感じている川崎市民はどの程度いらっしゃるのでしょうか。
 
それもそのはず、本市のような「普通交付税の不交付団体」の財政は、実際は豊かでもなく、寧ろ他の全国20ある政令指定都市と比較し、交付税を加味した実際の市民一人当たりの財源(要するに市民サービス)は下から数えた方が圧倒的にはやいのが実情です。
 
さらに加えて申し上げれば、節税ではありませんが、僅かな資金で魅力的で多くの返礼品を貰えることで、年々利用者が増えている「ふるさと納税」についても、不交付団体特有のデメリットがあります。政令指定都市で言うと、川崎市以外の都市では、ふるさと納税による減収分を国から交付金として一部補填される仕組みがあるのですが、不交付団体にはそれがありません。なので、丸々持ち出しで税収減に繋がるということです。
 
詳しくは、当方の過去ブログを参照頂ければ幸いです。

平成30年度決算から見る川崎市の財政状況について

2019.09.03

   

臨時財政対策債(通称:臨財債)も発行不可

 財源が足りない場合、地方自治体においては臨財債の発行という手もあります。ですが、この臨財債発行も、不交付団体は認められていないのです。
 臨時財政対策債(通称:臨財債)は、国の地方交付税特別会計の財源が不足し、地方交付税として交付するべき財源が不足した場合に、地方交付税の交付額を減らして、その穴埋めとして、該当する地方公共団体自らに地方債を発行させる制度です。
 形式的には、その自治体が地方債を発行する形式をとりますが、償還に要する費用は後年度の地方交付税で措置されるため、実質的には地方交付税の代替財源と見られています。
   

市債発行は法令上認められていない

 市債(地方債)を発行してその財源にすれば良いではないか?と思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、地方債は原則として、公営企業(交通、ガス、水道など)の経費や建設事業費の財源を調達する場合等、地方財政法第5条各号に掲げる場合においてのみ発行できることとなっている為、今回のような場合、認められません。
 そして、国の赤字国債のような発行の仕方も地方自治体には認められていません。

  

独自施策を講じる為には、実質「減債基金」に頼るしかない

上記に転載した、当方の過去記事「平成30年度決算から見る川崎市の財政状況について」に記載の通り、川崎市の財政状況は現在、将来の市債償還の為に積み立ててきた、減債基金の切り崩しによって表面上の黒字化を保つ事が、常態化しています。福岡市や北九州市など、新型コロナウイルス感染拡大の対応で、国・県が降りてくる財源と政策では、不十分だと思われるところに対して、独自施策を展開していますが、この財源は「財政調整基金」で対応しています。
 
この財政調整基金はいわゆる自治体の貯金とも言えるもので、平成30年度決算ベースで、福岡市は404億円、北九州市は279億円ありました。新型コロナウイルス対応についても、これを財源に独自施策を展開しています。
   

残り1億円しかなくなる財政調整基金

では、川崎市はというと、平成30年度ベースで61億円しかありません。しかもその後、昨年の台風19号による緊急対策等、切り崩しに拍車がかかっている状況です。そして、今回の新型コロナウイルスにおける「2,200億円規模の川崎市緊急経済対策」でさらに切り崩しが進み、経済対策実施後の財政調整基金は残り1億円とも言われています。
 
ここまで、前提となる川崎市の財政状況についてお伝えさせて頂きました。
今回の補正予算で議題となった補正予算においては、そのほぼ全てが国からの財源となっており、市独自で捻出した財源はありません。
それでは、なぜこの限られた財源の中、30億円事業となる「川崎じもと応援券」実施をなぜ実施したのでしょうか。

なぜプレミアム商品券を選択したのか

  

国からの交付金をどのように使うか?という検討になっている

上記のような財政状況である中では、今回の国からの「新型コロナ対応臨時交付金」をどのように使うか?に議論が集中します。今回の川崎市一般会計補正予算のポイントは、以下となります。
①補正予算額約1,781億円が追加される
②その内、約1,550億円が国からの特別定額給付金事業(一律10万円)である
③残り231億円の使い道は以下となる。
 
 ・経営安定資金 150億円 【経済対策】
 ・川崎じもと応援券 30億円 【経済対策】
 ・子育て世帯臨時特別給付金 約18億円 【生活支援】
 ・新型コロナウイルス感染症対応資金利子補給金 約14億円 【経済対策】
 ・信用保証等促進支援事業 約11億円 【経済対策】
 ・新型コロナウイルス感染症緊急対策 約6.3億円 【感染症対応】
 ・生活困窮者自立支援事業 約1.7億円 【生活支援】
 ・文化芸術活動支援事業、防犯対策事業(特殊詐欺対応) 約0.4億円 【生活支援】
 
上記それぞれの施策は評価できるものもありますので、そのすべてが問題となっているわけでは勿論ありません。
「川崎じもと応援券」目玉の経済施策として、打ち上げたものですが、同じ30億円をかけるのであれば、別の施策だった方が良いのではなかったのか?という反論が、市民・議会超党派から出ていました。
 
具体的には、「市内事業所に直接給付する選択肢と、間接的な100億規模の市内経済効果」のどちらを取るかの選択肢が、市長をはじめ行政機関にはあり、後者を選択し此度の議会に上程したということだと当方は理解しています。市内には、どの程度の飲食店等の小規模事業者があるのかというと、財政局曰く、16,000〜20,000店舗程度だということです。
 
それらの事業者に対して、他都市同様10万円ずつ配布したとしても20億円+α。事務経費等を含めても、十分講じることができる施策となっています。若しくは、事業者ももう少ししっかり絞った上で、給付する金額を上げても構いません。横浜市のように、市経済界と協力して対応しても良いと思います。
 
因みに、市内事業者への直接給付ではなく、プレミアム商品券として経済効果を狙う施策を実施するのは、全国20ある政令指定都市の中でも本市のみとなっています。
 
  

市内経済界(市商工会議所・市商店街連合会)も市と共同記者会見を実施

この川崎じもと応援券を発表した4月30日の記者会見では、緊急経済対策の当事者団体でもある市内経済界(商工会議所・商店街連合会)も同席の上で行われ、両組織の会長も、応援券について前向きな捉え方で言及をされていましたので、今回の政策の受益者団体を代表しての意見として受け止めるべき話だと当方は思っています。
 
ただ、個人的な見解ではありますが、此度のプレミアム商品券については、市内経済界からの具体的な要望を受けて実施した施策ではなく、市が具体化したものを提案し、市経済界から承諾を受けたような構図になっていることが気になっているところでもあります。
 
実際の記者会見における議事録は以下からご覧いただけますので、興味ある方はご確認下さい。
 
2020年(令和2年)4月30日会見2020年(令和2年)4月30日会見
 

改めて何が問題なのか

  

今とるべき施策なのか

改めて、本施策で問題と指摘されている点について主な部分を挙げてさせて頂きたいと思います。
 

・今回の商品券自体を否定する訳ではないが、2次補正以降でも良かったのではないか
・コロナが本格的に終息してからでなければ、商店の経済活動は再開できないではないか
・消費者も現在は外出自粛状況なのにどうやって商店で使うのか
・事業者からすれば換金に時間がかかる為、逆に資金繰りの悪化に繋がるのではないか
・なぜ1,000円単位なのか、以下の買い物をしても釣り銭が出ないのはおかしいのではないか
・30億事業の約13%が経費に費やされるのであれば、その分、直接給付すべきではないのか
・全政令指定都市の中で、プレミアム商品券は本市のみ、事業者間で不平等感が出るのでは
・結果的に市内で商売をしようという気概の喪失に繋がる可能性がある

 
 さらに、いつから販売され、いつから使えるのか、対象店舗が議会には示されず、制度内容が不透明ということも審議自体が困難になった理由でもあります。そういった様々な点を踏まえて、議会での代表質疑を行いましたが、最後まで納得を得られる答弁は無かった印象を多くの議員が受けています。代表質疑における「質問と答弁」、その後、詳細審議を行う「総務委員会」での審議、それぞれで多くの議論が行われました。

スピード感を重視し、附帯決議を付け賛成とした

 すでに記載のとおり、今回の補正予算案は、市民への10万円給付事業(特別定額給付金)等の生活支援に加え、融資制度の充実等、様々な経済対策の一日も早い実現が必要でもあります。予算の組換えにも発展しかねない内容であるのは間違いないですが、その結果、特別定額給付金の支給にも影響が出かねない事態にもなる為、自民党川崎市議団としては、事業者に対して、市の独自施策として直接給付等の支援策を速やかに講じることを含め、附帯決議をつけ賛成し、さらに閉会後に市長に対し、直接の要望を実施することでまとまった次第です。
 
議案第75号 令和2年度川崎市一般会計補正予算」に対する 附帯決議案議案第75号 令和2年度川崎市一般会計補正予算」に対する 附帯決議案
 
 引き続き、事業者に対して速やかに直接給付を実施してもらうよう市長に対して働きかけていくと同時に、「川崎じもと応援券」がしっかり目的通りの経済効果が発現できるよう取り組んでいく次第です。また、前段に記載した財源確保対策は、市で行える部分としては、あとは「減債基金」のさらなる切り崩しとなります。
最終的には、そこにも手を出さなくてはならない程の緊急事態だと認識していますが、一方で、国に対して川崎市の状況を訴え、財源確保をしっかり行って頂くよう伝えていかなくてはなりません。
 
長文となりましたが、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
 


ABOUTこの記事をかいた人

宮前区選出、川崎市議会議員(自由民主党) A型/乙女座/丑年 菅生小・中学校→法政二高→法政大学卒業 2008年4月伊藤忠テクノソリューションズ入社 2014年7月に政治活動に専念する為、同企業を退社 2015年第18回統一地方選挙において初当選。現在二期目。 趣味:剣道四段、空手二段、書道(毛筆三段、硬筆二段)

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