川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例の制定について

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※クリックすると法務省のヘイトスピーチ解消法に関するページに遷移します

 

みなさん、こんばんは。川崎市議会議員(宮前区選出)の矢沢孝雄です。

 

川崎市議会第5回定例会が11月25日から始まり、初日の提案説明日から先決議案に対する代表質疑が行われました。そして本日、台風被害に対する補正予算等を含めた先決議案の採決が行われたところです。

 

12月4日からはいよいよ、各会派における代表質問が始まります。
4日(水)は「自民党、共産党」、5日(木)は「公明党、みらい、チーム無所属」といった順で進められ、代表質問では提出議案を中心に質問が展開されます。今回の提出議案においては、やはり議案第157号「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例の制定について」が大変注目されています。

 

条例前の素案におけるパブコメでは、過去最多の18,243通(意見総数26,514件)のご意見が市に寄せられました。現在は当方のもとにも、多々ご意見や質問を頂いておりますが、都度お答えすることは出来ないので、質問の多い部分について「市の見解」を参考に一部個人的理解を付与しながら掲載致します。

 

この「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)に関するパブリックコメント手続の実施結果については、皆様がお持ちの疑問等へのお答えになるかと存じますので、本件に興味感心の有る方におかれましては一読されると参考になると思います。

 

↓以下にリンクを張っておきます。

 

尚、上記にも記載したとおり4日の代表質問を含め、議案審査期間ということもあり条例への賛否等は掲載致しません。また、今後も多くのご意見等を個別に頂くかと思いますが、個別には対応しかねますのでご了承の程お願い致します。

 

川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例案 全文
↓以下URLから確認可能です。

 
 

条例案に対して質問が多い項目についての見解

以下に、本条例案に寄せられる様々な意見の中でも質問の多い項目について、記載していきたいと思います。黄マーカー部分は要約(当方の理解)です。
 

◯「ヘイトスピーチ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動等の定義は?」(879件)

 

この条文の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進」に関する部分については、国の「差別的言動解消法(以下、ヘイトスピーチ解消法)」の範囲内で制定しており、「ヘイトスピーチ解消法」で規定している用語は、条例上も、同義で使用していく。
 本市としては、関係法令等を遵守し、また、「ヘイトスピーチ解消法」について、参議院及び衆議院の法務委員会でなされた附帯決議などにも配慮の上、適切に対処していく。

 

  → 用語等の定義は国の解消法のものと同義
 
 

◯差別的取扱いに限らず、差別的言動も全て禁止にすべきとの意見(645件)

 

あらゆる差別は許されるものではありませんが、「日本国憲法」の保障する「表現の自由」を制約することについては、規定の明確さが求められ、また、過度に広範な規制にならないよう、慎重な対応が必要。
 単に、差別的言動の禁止として、その範囲が過度に広範に過ぎる場合には、事例によっては明確な線引きが困難であることなどから、この条例では、不当な差別的取扱いをしてはならないとしていく。

 

◯「集会・言論の自由」等の「表現の自由」の侵害である。「表現の自由」は最大限守られるべきである。「表現の自由」を保障する憲法に違反する。外国人関連の意見や批判など正当な表現行為を萎縮させる。言論弾圧である。などの意見。(366件)

 

表現行為が、他者の生命・身体・自由・名誉・財産などの具体的侵害に及ぶ場合には、「表現の自由」の保障の限界を超えるものとして、その制限が正当化させることがある。「表現の自由」を制約することについては、規定の明確さが求められ、また、過度に広範な規制にならないよう、慎重な対応が必要。
 この条例では、国の「ヘイトスピーチ解消法」で定義される「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に対して、一定の要件を設け、対象を限定した上で、表現も具体的にして、構成要件の明確化を図っていく。

 

 → 他者の権利の侵害に及ぶ場合はその限りではない。表現の自由を成約する立法については、明確であり過度に広範な規定となっていないことが求められる。本条例案では、一定の要件を設け、対象を限定した上で表現も具体的にして、構成要件の明確化を図っていく為、求められる要件にも沿っていると考えているのが、市の見解。

  

◯日本人に対するヘイトスピーチを容認するのはおかしい。日本人への逆差別・言論弾圧である。法の下の平等に反する。日本人へのヘイトスピーチも罰するべきである。などの意見。(2,991件)

 

 平成25年5月12日〜平成28年1月31日までにかけて、計12回にわたり、本邦外出身者の排斥を訴える内容のデモが実施された。この内、平成27年11月8日及び平成28年1月31日のデモは「ヘイトスピーチ解消法」の立法事実となった。※ヘイトスピーチ解消法は、「不当な差別的言動」は許されないものであると宣言しており、「専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する(①)差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど,本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」を「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」と定義しています。
 本市では、今なお、こうした行為が再現されかねない事象が継続しているという、「地域の実情」がある(②)
 前述のとおり、「表現の自由」を制約することについては、規定の明確さが求められ、また、過度に広範な規制にならないよう、慎重な対応が必要(③)ではあるが、このような行為を繰り返し行うものについて、「表現の自由」に配慮し、一定の要件を設け、対象を限定した上で、表現も具体的にして、罰則規定として、行政刑罰に関する規定を設けていく。

 
   → まとめると以下の理由で本邦外出身者に限定している。
   ①そもそもの国の法律が専ら本邦外出身者に対するものとなっている(※附帯決議あり)
   ②国の法律の立法事実ともなっており、再現されかねない「地域の実情」がある
   ③「表現の自由」を制約することには、最大限配慮する必要がある

  

◯日本国憲法の保証する「法の下の平等」に反するのでは?(74件)

 

各人における現実の差異を前提として、こうした差異と、法令における取扱い上の違いとの関係が、社会通念から見て合理的である限り、その取扱い上の違いは平等違反ではないとされている。この考え方と本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する条例の規制は合致するものと考えている。
 
 → 憲法第14条には違反しないというのが市の見解
  

◯ヘイトスピーチ解消法は理念法であり、条例で罰則規定を設けるのは憲法違反であるとの意見(147件)

 

「徳島市公安条例事件」に係る最高裁判例では、「国の法令が全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾抵抗はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じ得ない。」と示されている。
「ヘイトスピーチ解消法」第4条第2項には、「地方公共団体は、・・・、当該地域の実情に応じた施策を講じるよう務めるものとする」定められている。また、「ヘイトスピーチ解消法」では、「地域社会に深刻な亀裂を生じさせている地方公共団体においては、その解消に向けた取組に関する施策を着実に実施すること」との附帯決議がされている。
本条例における罰則規定の対象については、「日本国憲法」上の「地方公共団体は、・・・、法律の範囲内で条例を制定することができる」や「地方自治法」上の「地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、・・・、条例を制定することができる」との原則に則っている。
罰則規定を適用するための検察等による手続きに至る前に、本市による「勧告」及び「命令」に対する違反を要件とすることで段階を踏んで慎重に判断する仕組みを設けており、本市の判断に当たっては、この条例で設置する市長の附属機関である「川崎市差別防止対策等審査会」の意見を聴くこととし、また、行政刑罰を選択することで、一行政機関たる本市の判断だけでなく、検察、裁判所といった司法機関による二重三重の過程を経ることとしたことに加え、「表現の自由等への配慮」の規定を設けることにより、「日本国憲法」の保障する「表現の自由」を不当に侵害しないよう、留意していく。
 
 → 憲法違反ではないというのが市の見解。また罰則についても表現の自由を不当に侵害しないよう留意されている

 

 

頂くご意見等において、市の見解と当方の理解を掲載した方が良いと感じた部分については、今後追記していきたいと思っています。

 

また、これまで素案が提出された後、前回議会における自民党代表質問を以下に記載致します。
自民党会派としても勉強会や議論を重ねながら、今回の第5回定例議会に臨んでいます。

 

【参考】過去の川崎市議会自民党代表質問(令和1年第4回定例会)※議事録抜粋

 

 仮称川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例素案について伺います。本市では、これまでも多くの人権施策、条例を展開してきました。そうした中、いわゆるヘイトスピーチによる人権侵害が顕著化し、しかも、川崎市内で大規模に行われるような中では、他都市に先駆けて条例を制定する意義は理解に難しくありません。そこで、素案について何点か伺います。まず、せんだって募集したパブリックコメントの状況、内容について伺います。
 川崎市人権施策推進協議会からの提案でも人権全般を見据えたものが求められていますが、実際のヘイトスピーチの現場では、いわゆるカウンタースピーチと言われる反対勢力の内容はひどいものです。この条例は、差別発言をする者にはひとしく規制を発揮するものなのか伺います。
 川崎市では、せんだって「公の施設」利用許可に関するガイドラインをつくりましたが、あえてさらなる条例制定を目指す理由を伺います。また、人権全般を見据えた条例制定が必要とされながら、本邦外出身者に対する不当な差別的言動にのみ罰則を設けること自体が、人種、国籍などの差別を禁止する憲法第14条に違反しないのか伺います。
 そもそも国の法律でも規定していない罰則を条例化できる根拠、憲法第21条との整合性について伺います。現在開催中であれだけ内容のひどいあいちトリエンナーレにおける表現の不自由展ですら、不適切な展示の撤去については賛否の声が上がりました。本条例案に対する川崎市の知る権利、表現の自由の範疇についても伺います。
 また、現行法令における脅迫罪、名誉毀損罪などの既存法令を援用することにより、本条例への罰則項目を削除することができるのではないのか、法律家の見解もあわせて伺います。
 そもそも罰則の導入に当たっては、誰がどのような情報収集を行い、差別防止対策等審査会にどういった情報を提供した上で意見を聞くのか伺います。

 

  

 ◎市民文化局長(向坂光浩) 市民文化局関係の御質問にお答え申し上げます。
 初めに、仮称川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例素案についての御質問でございますが、パブリックコメント手続でお寄せいただいた御意見につきましては、現在精査しているところであり、全体像が未確定なことから、その状況等をお示しすることは困難な状況でございます。今後、市の考え方を整理した上で、必要な対応を行ってまいります。
 次に、差別的言動の禁止につきましては、本邦外出身者に対する不当な差別的言動を行う者で、一定の要件に該当するものを規制の対象とするものでございます。次に、条例制定の理由についてでございますが、いわゆるガイドラインは、各施設の設置・管理条例に基づき、利用制限の検討、判断を行う際のよるべき基準として策定したものであり、この条例は、人権尊重のまちづくりを総合的かつ計画的に推進し、もって人権を尊重し、ともに生きる社会の実現に資することを目的に、不当な差別を根絶していくことを目指すものでございます。
 次に、日本国憲法が保障する法のもとの平等につきましては、各人における現実の差異を前提として、こうした差異と法令における取り扱い上の違いとの関係が社会通念から見て合理的である限り、その取り扱い上の違いは平等違反ではないとされているところでございます。この考え方と本邦外出身者に対する不当な差別的言動に関する条例の規制は合致するものと考えておりますので、憲法第14条には違反しないものと考えております。
 次に、法律に定めのない罰則規定を条例に設けることにつきましては、徳島市公安条例事件に係る最高裁判例では、国の法令が全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間には何らの矛盾抵触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じ得ないと示されており、また、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律において、地方公共団体は当該地域の実情に応じた施策を講ずると規定されていることから、ヘイトデモが行われた本市の実情に鑑み、条例に罰則規定を設けることは許容されるものと考えております。また、日本国憲法が保障する表現の自由につきましては、法律が定義する本邦外出身者に対する不当な差別的言動に対して、一定の要件を設け、限定を加えることにより、構成要件の明確化を図ったほか、市の判断に当たっては、附属機関の意見を聞くこととし、行政刑罰を選択したことで、一行政機関たる本市の判断だけではなく、検察、裁判所といった司法機関による二重三重の過程を経ることとしたことに加え、表現の自由等への配慮の規定を設けることにより、憲法第21条との整合性が図られているものと考えております。
 次に、条例案に対する本市の知る権利、表現の自由の範躊につきましては、表現の自由も無制限ではなく、この条例が規制する行為には違法性があることから、その制限が正当化されると判断しておりますので、こうした場合には、結果として、その知る権利も一定の制限を受けるものと捉えております。次に、既存法令との関係についてでございますが、この条例が規制する行為につきましては、刑法上の脅迫罪や名誉毀損罪などの適用が想定されるところでございますが、同法の適用要件などを考慮し、条例に罰則規定を設けることとしたところでございます。次に、差別防止対策等審査会への情報提供につきましては、現時点では、本市が収集した情報及び条例が規制する行為の映像や音声の記録を提供することにより、その意見を聞くことを想定しているところでございます。

 
 
 

流れを追ってみると、、、


多くの方から特に「本邦外出身者のみが対象」となっている部分について、多くのリアクションが来ています。この部分に対する、市の見解に対する当方の理解で上記にも記載したとおりですが、一方で②の要素「地域の実情」という部分について、現在は本邦外出身者に対する事案が起きていることへの対処に過ぎず、逆パターンが発生し地域の実情となり得る状態になった時にどう対処するかが、現時点でははっきりしていないと考えています。
この点について、今後の審査、代表質問等を通じてしっかり市の姿勢を確認していかなくてはならないと感じています。
 
2016年に「ヘイトスピーチ解消法」が成立して以降の流れを追ってみると、
 
「ヘイトスピーチ解消法 → 諮問機関(川崎市人権施策推進協議会)が市長に答申 →公共施設利用についてのガイドライン → ガイドラインを事実上活かせず → ヘイト対策から”差別のない人権の取組” → 他都市事例含めた実効性の検討 → 本条例」 といった流れを鑑みても、本市がどうやったら目の前で起きている差別行動をやめさせることができるかというのを真剣に考えてきた結果でもあります。議会としても、「差別は許されない」という大前提に立って、この実効性を真剣に議論し推進していく必要があると思っています。他方、前述のとおり、国の法律における附帯決議をどう受け止め、本条例に表現すべきかについても議論していきたいと思っています。
 
本日も最後まで読んで頂き、有難うございました。
 


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