決特質問「実運用に耐えられない!〜マイナンバー紐付けの公金受取口座について〜」

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みなさん、こんばんは。川崎市議会議員(宮前区選出)の矢沢孝雄です。

 

川崎市議会第4回定例会における決算審査特別委員会が9月21日からスタート致しました。

 

決算審査特別委員会というのは、川崎市の令和4年度決算内容について審査する為の委員会です。

 

5つある常任委員会と同じ枠組みで、5つの分科会に分かれてそれぞれが所管する局の決算内容について議論していきます。

 

総務委員会→総務分科会、文教委員会→文教分科会、健康福祉委員会→健康福祉分科会、まちづくり委員会→まちづくり分科会、環境委員会→環境分科会

 

といった形です。

 

決算も今議会に上程された数多くの議案の一つです。なぜ決算議案だけ特別委員会が開催されるのかというと、それは言葉の通り、すべての所管担当が執行している膨大な決算情報を見る為に「特別」にやっていく必要があるよねという意味です。

 

決算だけでなく、来年になれば次年度予算案が出てきます。これも一つの議案であり、やはり「予算審査特別委員会」というものが分科会形式で開催されます。

 

当方は現在、総務委員会に所属している為、今回の決算審査特別委員会では、総務分科会での質問となりました。

 

前置きが長くなりましたが、以下質問内容についてご報告してまいります。
今回の質疑について、翌日9月22日の神奈川新聞に取り上げて頂きましたが、若干意図しない方向性で書かれてしまいました。新聞記事内容を補完する意味でも、実際のやり取りについて詳細に記載致します。

 

川崎市、臨時給付金支給でマイナ公金受取口座の活用せず by 神奈川新聞

 

質問の背景

今回取り上げたのは、タイトルにもある通り、マイナンバーカード&公金受取口座についてです。

 

公金受取口座とは一体どういったものなのか?これについては、以下リンクからデジタル庁が公表している公金受取口座に関するページでご確認ください。

 

※クリックするとデジタル庁ページに移動します。

 

なぜこの組み合わせでの質問を行うに至ったかというと、令和4年度に(補正)予算計上され執行された業務の中で、納得が行かなかった事務執行が続いていた為です。

 

それは何かというと、国の地方創生臨時交付金を活用した特定公的給付事業についてでした。

 

特定公的給付とは、「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律」(令和 3 年 5 月 19 日施行)に基づく給付です。

 

①国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある災害もしくは感染症が発生した場合に 支給されるもの又は②経済事情の急激な変動による影響を緩和するために支給されるもの として内閣総理大臣が指定するもの。

 

要は、緊急事態に内閣の閣議決定を経て支給できる給付金のことです。

 

コロナ拡大で初の緊急事態宣言下実施された10万円給付(特別定額給付金)も特定公的給付ですし、昨年度に行われたもので申し上げると、例えば以下のようなものがありました。

 

・ 子育て世帯生活支援特別給付金(ひとり親世帯等に対して児童1人あたり5万円給付)
・ 電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金(住民税非課税世帯等に対して5万円給付)
・ 出産・子育て応援給付金(妊娠出産対象者に対して5万円給付等)

 

概要含めざっくりとこういったものがありました。

 

そして、昨年度実施した給付金を実施するタイミングでは、すでにマイナンバーに紐付けた公金受取口座の登録がスタートしており、登録するとマイナポイントが貰えるということで、多くの国民が登録したことと存じます。

 

当然、上記給付金を実施する際には、この公金受取口座を活用した速やかな給付が行われるんだろうなと思っていたのですが、結論からすると、川崎市においてはすべての特定公的給付において、この公金受取口座を活用しませんでした。

 

一般感覚から言うと、「いや何で使わないの?その為の口座登録でしょ?」というのが大勢ではないでしょうか。当時は、すでに「(執行の直前になって)補正予算として出します。こういったやり方でやります。広報はこうします。etc…」全てが決まってから議会報告があるので、(下手に手をつけると迅速な事務執行にも支障が出る可能性があるので)手のつけようがありませんでした。

 

上記のような背景があり、令和4年度決算を審査するタイミングでは必ず詳しく議論していこうという気持ちで今回質問に取り上げさせて頂きました。

 

 実際の質疑の内容

それでは、実際の質疑の内容を以下ご報告します。※事前調整していない質疑応答もある為、すべてが記載されているわけではありません。様子を含めてご確認したい方は、川崎市議会ホームページからアーカイブ動画をご覧ください。

 

矢沢たかお
(矢沢たかお)
本市は昨年度、マイナンバーカード関連業務として、約10億円を執行しています。本事業の取組内容と成果伺います。併せて、現在のマイナンバーカード交付状況、公金受取口座の登録状況を伺います。

 

(デジタル化推進室担当課長)
マイナンバーに関するご質問でございますが、マイナンバー関連の主な業務といたしましては、マイナンバーカードセンターの運用や出張申請などカード交付に関する業務と、マイナポイント申込等の支援に関する業務がございます。
このうち、マイナポイント支援コーナーにつきましては、市内の各区役所・支所に設置し、マイナポイントの申込みやマイナンバーカードの健康保険証利用、公金受取口座の登録等を希望する市民の皆様の支援を行ってきたところでございまして、昨年度支援を行なった件数は約10万件でございます。
マイナンバーカードの交付状況につきましては、8月末時点で約111万6千件、住民登録人口に対する交付率は72.98%となっております。
公金受取口座の登録状況につきましては、本市在住の方の累計登録数が、9月17日時点で約63万件であるとデジタル庁から伺っているところでございます。

 

矢沢たかお
(矢沢たかお)
昨年度は、子育て世帯生活支援特別給付金、電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金、出産・子育て応援給付金等といった特定公的給付が行われましたが、本市はマイナンバーカードに登録された公金受取口座を活用した給付を実施しませんでした。先ず、当時の段階で公金受取口座を活用した給付は技術的に出来たのかについて、総務企画局の見解を伺います。
また、なぜ公金受取口座を活用しなかったのか、それぞれの所管担当局にその理由を伺います。

 

(デジタル化推進室担当課長)
公金受取口座についての御質問でございますが、昨年10月の段階におきましては、国への手続や、口座情報の照会に必要なシステムも整っている状況であり、公金受取口座を活用した給付が可能であったものでございます。

 

(児童家庭支援・虐待対策室担当課長)
子育て世帯生活支援特別給付金及び出産・子育て応援事業の公金受取口座の活用についての御質問でございますが、子育て世帯生活支援特別給付金のプッシュ型の支給については、対象者がひとり親世帯は児童扶養世帯の受給世帯、ひとり親世帯以外については、児童手当を受給している市民税均等割世帯であったことから、国からの通知に基づき予め情報を把握できていた児童扶養手当または児童手当の口座に支給したものでございます。
子育て世帯生活支援特別給付金の申請が必要な方及び出産・子育て応援事業における応援ギフトの支給については、仮に公金受取口座へ支給しようとした場合は、口座情報の照会をデジタル庁が所管するネットワークサーバーに対して個別に手動で行う必要があり、膨大な時間を要すため、迅速な支給を行う観点から、公金受取口座の活用を見送ったところでございます。

 

(健康福祉局総務部担当課長)
電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金に係る公金受取口座についての御質問でございますが、令和4年度に実施致しました非課税世帯等を支給対象とした臨時特別給付金事業と、当該事業の支給要件がほぼ同じであったことや、口座情報を変更されている方が少ないと考えられたことから、本市が保有した口座情報を活用することが、迅速で正確な給付に繋がるものと判断したためでございます。
併せて、公金受取口座の活用を考えた場合、口座情報を個別にデジタル庁に紹介する必要があることや、既存システムの改修にかかる時間等の課題もありましたことから、迅速かつ効率的な支給を優先し、公金受取口座の活用を見送ったところでございます。

 

矢沢たかお
(矢沢たかお)
そもそも公的給付支給等口座の登録は、「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律」に基づいて実施されており、法律の第一条目的には「・・・特定公的給付の支給を実施するための基礎とする情報について個人番号を利用して管理できることとする等により、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施を図ることを目的とする。」こと書かれています。
いま、それぞれの局から答弁を頂きましたが、マイナンバーに紐付けた公的受取口座を活用した給付事務については、技術的には出来たとしても、実際の運用には耐えられない、使える状況に無いということが分かりました。
実際に今後、これまでと同じように特定公的給付が行われた際もこの公的受取口座を活用した給付は行われない状況と推察します。そもそも、個人情報と口座情報を紐付けることで、緊急的な給付作業を効率化し、迅速かつ確実に市民、国民に給付することを目的とした仕組みが現場レベルでは機能していないという現状について、どのように考えているのか、総務企画局長に見解を伺います

 

(総務企画局長)
公金受取口座についての御質問でございますが、公金給付に関する公金受取口座につきましては、利用可能な環境が整っておりますが、迅速な給付に活用するためには、口座情報の照会に当たって時間を要するなどの課題があると認識しております。
今後につきましては、公金受取口座の活用が進むよう、課題の解決に向けて事業所管局と連携しながら取り組んでまいります。

 

 最後に

質疑の最後に、マイナンバーを所管する総務企画局に対して、

 

・技術的使えても実際の給付作業には使えない。運用に耐えられないというのは大きな問題。
・何が原因なのか、何が課題なのかがまだ把握出来ていない状況
・いつ何時再び緊急的な支援が必要となる機会が来るかわからない
・公金受取口座を活用した迅速かつ正確な給付がどの所管担当局にとってもベストな給付方法となるようデジタル庁含め川崎市総務企画局は取り組んで欲しい。

 

こういった内容をお伝えして、質問を終わりました。

 

本件については、総務企画局長としても問題視してくれており、課題の把握と今後の取組について進展があれば報告が入ることになっています。

 

今後も動向に注視してまいります。

 

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 


ABOUTこの記事をかいた人

宮前区選出、川崎市議会議員(自由民主党) A型/乙女座/丑年 菅生小・中学校→法政二高→法政大学卒業 2008年4月伊藤忠テクノソリューションズ入社 2014年7月に政治活動に専念する為、同企業を退社 2015年第18回統一地方選挙において初当選。現在二期目。 趣味:剣道四段、空手二段、書道(毛筆三段、硬筆二段)

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