一般質問③本市施策における経済安全保障の重要性について

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みなさん、こんばんは。川崎市議会議員(宮前区選出)の矢沢孝雄です。

 

さて、今回も前回に引き続き第4回定例会の中でも一般質問で取り上げたテーマについて、ご報告をさせて頂きます。

 

一般質問で取り上げたテーマは以下の通りとなります。

 

1 都市計画道路横浜生田線(水沢工区)の状況について
 宮前区にある清水台交差点を菅生緑地方面に真っ直ぐ抜ける都市計画道路の進捗状況を確認致しました。横浜市側に抜ける道路であり、昭和61年から川崎市による用地買収を開始。川崎市議会にて、1期目当選当初から開通に向けた取組を取り上げ続け、令和元年にすべての用地買収と基本設計が完了。横浜市側との調整を残すのみとなっている。
 
2 特定生産緑地指定申し出の状況について
 2022年問題(生産緑地指定から30年が経過することによって、大量の農地が解除され失われる可能性がある問題)に絡め、2018年3月から取り上げてきているテーマです。30年を経過する生産緑地については、その期間を10年延長する特定生産緑地への指定申出を積極的に進めていくことが行政として大変重要な取組となっていきます。その指定申出状況について取り上げました。
  
3 本市施策における経済安全保障の重要性について
 現在、国では来年1月召集の通常国会で「(仮称)経済安全保障推進法」の提出を目指しており、法律成立後には「(仮称)経済安全保障担当室」を新設する方針を固めました。これまで国の役割として認識されてきた「安全保障」に関する議論が、地方公共団体にも求められる時代、社会情勢へと移り変わり始めています。自治体における経済安全保障の重要性に対し、質問として取り上げました。
   

 

3 本市施策における経済安全保障の重要性について

矢沢たかお
 我が会派の代表質問でも取り上げました「経済安全保障」について、さらに伺って参ります。現在、国では来年1月召集の通常国会で「(仮称)経済安全保障推進法」の提出を目指しており、法律成立後には「(仮称)経済安全保障担当室」を新設する方針を固めました。本年9月、神奈川県警では、外国による日本への諜報活動など、経済安全保障への対策を強化するため、外事課を強化する組織改編も行われ、これまで国の役割として認識されてきた「安全保障」に関する議論が、地方公共団体にも求められる時代、社会情勢へと移り変わり始めています。
 11月19日に行われた第1回経済安全保障推進会議では、「サプライチェーンの強靱化や基幹インフラの信頼性確保などを通じて、我が国の経済構造の自律性を向上させること、人工知能・量子などの重要技術の育成に取り組み、日本の技術の優位性、ひいては不可欠性を確保すること、基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持・強化を目指すこと」、この3つの目標を、我が国が目指す経済安全保障政策の大きな方向性として示されました。
 各自治体においても、今後の施策を進めていく上で、新たに加えていかなければならない概念であり、本市においても全庁をあげて、その重要性を認識しなくてはならないテーマだからこそ、質問を通じて、庁内・議会等における「経済安全保障」を含めた議論が進むきっかけになることを期待しています。
 様々な観点がある中で、先ず、本市における企業誘致施策の取組内容とこれまでの実績について、経済労働局、臨海部国際戦略本部に伺います。また、本市企業誘致施策において、本市が用意する助成制度を活用した進出や、かわさき新産業創造センターなど、公共施設を活用した企業進出支援の際、外国資本審査の有無、出資率等の外国資本情報の確認は行われているのかについても併せて伺います。
 

※クリックするとPDFをご覧いただけます。

 

 企業誘致の取組内容等についてのご質問でございますが、 本市では、これまでにマイコンシティなどにおける市有地などの分譲や賃貸によるほか、助成制度を活用し、企業誘致に取り組んできたところでございます。
 主な実績といたしましては、環境、エネルギー、ライフサイエンス分野における先端産業の創出と集積を目的とした、先端産業創出支援制度により、殿町地区の2社もふくめ、計3社に助成金を交付したほか、市内工業地域及び準工業地域への企業立地を目的とした、がんばるものづくり企業操業環境整備助成制度ではm市内移転も含めて、延べ14社に交付決定を行ってきたところでございます。
 また、助成制度や、かわさき新産業創造センター等の入居における審査に当たりましては、外国資本に関する項目を設けていないところであります。

 

 キングスカイフロントにおける企業誘致についての御質問でございますが、 キングスカイフロントにおける企業誘致につきましては、土地の所有者である独立行政法人都市再生機構(UR)等とまちづくりに関する協定を締結し、その後、UR等と策定した「まちづくりに関するガイドライン」に基づき、URが公募を行う際には、本市のライフサイエンス分野への取組に整合が図られるよう誘導してまいりました。
 本年9月にペプチドリーム株式会社がURから落札した土地をもちまして、拠点内すべての土地の取得者が決定したところでございます。
 なお、キングスカイフロントにおいて、URなどの事業者が主体となって公募等により入居企業を決定しているものにつきましては、本市として外国資本等を審査する手続きはございません。

 

矢沢たかお
 東京大学先端科学技術研究センター特任教授・多摩大学ルール形成戦略研究所の國分俊史所長は、地方自治体に求められる検討の視点として、「地方自治体は経済安保リスクを高める可能性がある活動を積極的に推進しており、地方自治における経済安全保障政策のあり方から検討する必要がある」との指摘をされています。経済安保の様々な切り口を示されていますが、例えば、「国内の重要インフラの他国支配・依存の回避」として、指定管理者制度に基づく施設の運営や、官民連携事業のPFI等による施設整備における外国資本の参入があります。
 そこで、総務企画局長に伺いますが、本市公共施設の設置や運営にあたって海外企業の受託事例があれば、伺います。また、海外企業、海外資本参入にあたって何かしらの審査・確認等との取り組みがされていれば伺います。

 

 本市施設における海外企業参入等についての御質問でございますが、海外に本社がある企業を仮に「海外企業」と定義いたしますと、これまで、本市の指定管理施設の運営やPFI事業を海外企業が受託した例はございません。
 また、指定管理者制度やPFI事業におきましては、WTO協定などの現行法令の趣旨を踏まえた運用を行っておりますことから、海外企業に対する参画制限等は設けていないところでございます。
 他方、個別の施設につきましては、その性質に応じて、必要なリスク管理や市内事業者への配慮などを選定基準として設定することにより、施設が適切に運用されるよう、努めているところでございます。

 

矢沢たかお
 世界3カ国目、日本初の商用量子コンピュータ「Kawasaki」の可能性とイノベーションパーク構想について、市長に伺います。
 

 

 量子コンピューター等についての御質問でございますが、本年7月にNANOBICにおいて、日本初のゲート型商用量子コンピューティングシステムが設置され、稼働開始したところでございまして、新薬や新素材の開発、サプライチェーンの最適化、新たな金融モデルの構築など、様々な分野で社会を変革するような成果が本市から生まれることを期待しているところでございます。
 また、本市には量子分野の研究開発に取り組む大手企業やベンチャー企業等も集積しておりますことから、量子イノベーションによる市内産業の競争力強化に向けて、将来、産業界や大学等における量子技術の発展を支えていくことが期待される「量子ネイティブ人材」の育成や量子コンピューターの普及促進を図ってまいります。
 本市といたしましては、こうした取組を発展させていくことにより、量子分野の産業や人材が更に集まり、新たなイノベーションが生まれ、エコシステムを形成する量子イノベーションパークの構築につなげてまいりたいと存じます。

 

矢沢たかお
 一義的には国でしっかりと検討し、法律を作っていくことが求められている中ではありますが、米中冷戦の真っ只中という世界情勢において、我が国にとって今後、経済安全保障施策の実効性を現実的に上げていく取り組みが必要です。その中で、自治体の役割、とりわけ本市のようなリーディングシティとなるポテンシャルを持つ大都市の果たすべき役割は非常に大きいものがあると考えています。今回は限られた時間の中で、懸念点と可能性、守りと攻め、両方の視点で取り上げましたが、最後に市長に伺います。  
 国において経済安全保障の法制化に向けた取組が進んでいる事を含め、今後の本市施策における経済安全保障観点の重要性について、自治体首長として、どのように受け止めているのか、また、今まで地方自治体の中に全く無かった経済安全保障の観点をどのように施策に落とし込んでいくことが重要だと考えているか、今後の取組を伺います。

 

 経済安全保障についての御質問でございますが、政府におきましては、内閣総理大臣を議長に「経済安全保障推進会議」を開催し、我が国の経済安全保障における取組の強化に向けて、法制化の検討が進められているところではございます。
 本市には、産業基盤となる製造業や、情報通信業等が集積していることから、今後の産業振興施策の実施に当たっては、必要な視点であると考えております。
 こうしたことから、市内に立地する先端的な研究開発を行う企業や研究機関、中小企業への影響等について、どのようなリスクが考えられるか、国の検討状況等を踏まえて情報収集に努め、本市産業の持続的、安定的な発展が図られるよう対応してまいりたいと存じます。

 

矢沢たかお
 我が国と異なる価値観を有する国が急速な経済発展を遂げており、その経済を武器にした国家戦略を他国に展開してきているからこそ、こういった議論に繋がってきていると私は認識しています。
 相対的に「安い国・ニッポン」と揶揄されてしまっているのが現状であり、地方自治体施策においても、ありとあらゆる視点で、我が国にとって安全保障の脅威となる国からの取り組みが進められています。
 市長の答弁「本市の今後の産業振興施策の実施に当たっては、(経済安保は)必要な視点であると考えている」は、非常に大切なご発言を頂いたと思います。是非、全庁的な意識改革を進め、自治体施策においても安全保障を考える時代になったんだということを広めて頂きたいと思います。
 このテーマは今回初めて議会で取り上げられましたので、国の動きにしっかりと呼応して今後も取り上げてまいります。

 

 <まとめ>
・ 本市の企業誘致助成制度や、かわさき新産業創造センター等の入居における審査に当たりましては、外国資本に関する項目を設けていない。
・ キングスカイフロントにおいて、本市として外国資本等を審査する手続きはない。
・ 本市の指定管理施設の運営やPFI事業を海外企業が受託した例はないが、海外企業に対する参画制限等は設けていない。
・ 首長として、産業基盤となる製造業や、情報通信業等が集積していることから、今後の産業振興施策の実施に当たっては、(自治体における経済安全保障は)必要な視点という認識を持たれている。
・ 現時点では(恐らく)どの自治体においても経済安全保障の観点が無い為、自治体がその視点を持った上で施策を行えるよう根拠法の成立が一日も早く必要。
・ 企業誘致における海外資本割合のモニタリング等、自治体独自で始められる部分もあるので、議会等を通じて職員の意識を醸成していく活動にも今後取り組んでいきたい。

 

 今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 


ABOUTこの記事をかいた人

宮前区選出、川崎市議会議員(自由民主党) A型/乙女座/丑年 菅生小・中学校→法政二高→法政大学卒業 2008年4月伊藤忠テクノソリューションズ入社 2014年7月に政治活動に専念する為、同企業を退社 2015年第18回統一地方選挙において初当選。現在二期目。 趣味:剣道四段、空手二段、書道(毛筆三段、硬筆二段)

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