勿体無い…課題だらけの公共施設を視察してきました〜川崎市南部防災センター〜

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みなさん、こんばんは。川崎市議会議員(宮前区選出)の矢沢孝雄です。

 

6月末に市議会第3回定例会、7月10日投開票だった参議院議員選挙、その後自民党市議団主催で実施された市内団体ヒアリングと慌ただしい日々が続いた7月でしたが、月後半には健康福祉委員視察として、千歳市-札幌市を視察して参りました。

 

札幌市で視察した「市民防災センター」には、日々市内中の教育機関に通う児童生徒が多く施設見学に来ているだけでなく、一般市民も無料でさまざまな災害体験(地震、風害、火事等)を経験することが出来る施設です。視察した当日も市内の幼稚園・保育園の園児たち、子連れの市民が体験に来ていました。

 

札幌市市民防災センターがきっかけで、川崎市にはそういえば、こういった市民の防災意識向上に資する施設、防災意識啓発を中心的に担う施設はあるのかな?正直思い浮かばないと思って調べたところ、「川崎市南部防災センター」がその役割を担っていた施設だということがわかりました。

 

正直今まで一度も行ったことがなかった公共施設で、どういった役割を持って建設され、これまでどのような成果を出してきたのか確認するため、8月10日川崎市南部防災センターの現地視察を実施してきました。

 

当日は以下の観点で視察を実施致しました。

 

・川崎市南部防災センターの概要
・開設当時の施設整備計画
・施設整備に要した諸費用及び現在の運営費
・施設運営体制
・施設老朽化状況
・南部防災センターが担う役割とその取組状況の確認
・同センター設置による成果
・現在の課題と今後の取り組みについて
・その他(現地にて)

 

川崎市南部防災センターとは?

インターネットで調べてみると

 民間サイト「itot(アイトット)」に掲載されている情報では、以下のように書かれていました。
 

「都市化が早くから進んできた川崎市では、消防体制整備や啓発施設設置など、市民を災害から守る防災施設整備も早期から始められてきた。「川崎市南部防災センター」は、市民の防災意識向上などを目的とした防災教育・研修・災害知識啓発拠点施設。通常は災害用物資の備蓄倉庫として管理されており、災害発生時には避難所として機能する。展示コーナーでは、災害時の非常持出用品など災害に関する展示を行っており、防災意識の向上にも貢献している。

 

市民に対して何らかの機能を提供する役割のある施設の情報が、検索しても出てこない。。。市としての紹介・説明文すらないという時点で、先ずおかしいと感じています。

 

そして、itot(アイトット)に記載されている情報ですが、直接役所にヒアリングしたのだろうか?
どこからひっぱってきた情報なんだろう。恐らく直接問い合わせをしたか、過去の資料から引用したのかもしれませんが、よく調べましたね。

 

それにしても、市民の防災意識向上などを目的とした防災教育・研修・災害知識啓発拠点施設って書いてありますが、本当でしょうか。展示コーナーまであるってことは、一般市民向け開放施設、つまり札幌市でいう市民防災センターのような機能を有していると解釈できるような説明です。

 

だとしたら尚更、専用ページが市公式ホームページ内に無いのがおかしい。市民向けの他施設なら、必ずといって良いほど市公式ページに何かしらの情報はあるのにも関わらず。

 

実際に現地を視察してみて

先ず、全体像ですが、当時の行政資料で掲載されていた絵で確認します。

 

クリックするとPDFをご覧いただけます。

以下、川崎市南部防災センターの実際の写真にコメントをつけて、ご報告していきます。

 

 

躯体はまだ利用できるが、機能として活用できない施設

 川崎市資産マネジメントカルテでは、庁舎等建築物の目標耐用年数は60年以上とされています。その為、昭和53〜54年に建設された南部防災センターだと、築40数年ですので、耐用年数としてはまだ使える状態です。

 

 市の公共施設としては基本まだまだ使わなくてはいけない施設という位置付けではある一方、実際に現地を視察してみて思ったことは、耐用年数的に問題ないのであれば、できる限り活用すべきという基本スタンスではあるものの、

 

「これはもう建て壊して、他の活用を検討した方が良い」

 

と率直に思える施設でした。
詳しい様子は上記写真のとおりです。

 

川崎市南部防災センター建設に至る経緯とその目的等について

建設に至る経緯とその目的について、川崎市南部防災センターの紹介する当時の紙資料には以下のように書かれています。

建設に至る経過

 昭和51年・52年度の2ヵ年、国土庁の委託を受け「地区防災基地整備計画調査」を実施しました。
 その結果、長期的防災対策(都市計画的整備)と短期的防災対策(応急対策)を有機的に連結する中期的防災対策が不可欠であることが明らかになり、昭和53年度「地区防災基地防災センター建設事業費補助金」の新設に伴い、市民各層代表も含めた建設調査委員会で検討を進め、川崎で最も災害危険度の高い小田地区に南部防災センターを建設するに至りました。

 

目的

 川崎市では「行政と市民が一体とならなければ、大災害に対処できない」という考えで、両者の接点として地区避難場所を指定し、状況に応じて広域避難場所へ避難する”段階避難システム”を採用しています。
 南部防災センターは、このシステムのモデルとして、災害時は、地区避難場所における応急対策活動の拠点として、小田地区三万人の市民に情報を提供したり、被災者の収容、医療救護ならびに給食・給水など備蓄物資の提供による救援活動を行います。
 また、平常時は、防災講演会、防災映画会、救急法講習会などを実施するとともに、災害記録写真、災害関係図書、防災機器用品等を常時展示して、初期消化、避難等、非常災害に的確に対応しうるよう、正しい防災知識を習得する場所としての役割を担うことを目指しています。

 

運営方針

 当時の資料で、運営方針については「通年24時間勤務体制(夜間・消防職2名)をとり非常災害時に備えるとともに、将来は、各種の地象・気象観測器材や実験装置などを充実し、楽しみながら学べる防災科学館的側面を強化して、防災の基盤となる市民コミュニティを育み、災害に強い市民づくりに寄与したいと考えています。」と記載がありましたが、実態とかけ離れている状況にあります。

 

南部防災センター、今後の方向性について

 川崎市南部防災センターは、昭和54年に川崎区小田に建設された公共施設です。鉄筋コンクリート造4階建、敷地面積約5,486㎡、建設面積約1,696㎡、延床面積約2,986㎡、工事費にして約4億8千万円を投じ、建設されました。
 

 

土地の高度利用が進み、如何にして土地を探すかで官民ともに血眼になる川崎市において、この公共施設はあまりに勿体ないと言わざるを得ません。
 

 

川崎市では、一体この施設の今後をどのように考えているのでしょうか。
 

 

 市が平成31年3月に公表した小田周辺戦略エリア整備プログラムにおいて、密集市街地を抱える不燃化重点対策地区に、南部防災センター等の公共空間を地域として加え、密集改善を効果的に促進させる土地利用方針を立案する方向性が示されています。
 

 

 ですが、平成31年に策定されてから、もうすぐ4年。具体的な動きは見えてこないどころか、進みそうにない雰囲気が漂っています。
 

 

 ここからはあくまで個人的な意見ですが、今後の活用については、川崎版PPPの考え方に基づく、サウンディング型市場調査等、民間ならではの発想、アイデアやノウハウを最大限活用することが重要と考えています。
 

 

 他政令市においては、市民が各種災害の模擬体験を通じて、防火・防災に関する知識や災害時の行動を学ぶことができ、自助・共助の大切さを学んでいただくための、防災体験型学習施設を整備しています。
 

 

 例えば、先月視察した札幌市においては、平成15年に市民防災センターを開設し、自治会や小・中学校等の教育機関など、これまで延べ100万人以上が来館したとのことです。川崎市南部防災センターが元々掲げていたコンセプトの一つ、防火・防災啓発、市民学習機能は現在も重要です。
 

 

 また、南部にはほとんど存在しない農地を作り出し、防災農地機能を兼ねた体験型農園として、市民が利用できる都市農地を作り出し運用するのも面白いかもしれません。
 

 

 いずれにしても、今後の施設整備、敷地活用を進めていく必要があります。小田周辺の皆様にもとっても、市民にとっても有益な敷地活用となるよう提言をしていきたいと思います。
 

 

今回も最後まで読んでいただき、有難うございました。
 

 


ABOUTこの記事をかいた人

宮前区選出、川崎市議会議員(自由民主党) A型/乙女座/丑年 菅生小・中学校→法政二高→法政大学卒業 2008年4月伊藤忠テクノソリューションズ入社 2014年7月に政治活動に専念する為、同企業を退社 2015年第18回統一地方選挙において初当選。現在二期目。 趣味:剣道四段、空手二段、書道(毛筆三段、硬筆二段)

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