予算審査特別委員会にて〜空き家対策の現状と課題〜

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みなさん、こんばんは。川崎市議会議員の矢沢孝雄です。
 
令和2年第1回定例会予算審査特別委員会の報告となります。今回、当方が予算審査で取り上げたテーマは以下の2点。
本日は、「10款5項5目 空き家対策「利活用推進事業費」についてをご報告させて頂きます。
 

◯7款4項3目 都市農業施策「農用地活性化事業」について
→生産緑地指定から30年を迎え、一気に宅地化が進むのではないかと問題視されている2022年問題。本市では現在、特定生産緑地指定を推進しています。本市の農地の状況を俯瞰し、今後の方向性についての議論をさせて頂いています。
 
10款5項5目 空き家対策「利活用推進事業費」について
→当方にも陳情相談が増えてきている空き家問題。本市においても急速にその数を増やしている状況にあります。本市における空き家対策の現状と課題について議論をさせて頂いています。
それでは、以下議会における当方と行政のやり取りを記載致します。また、途中で出てくる資料は当方が作成し議会中もディスプレイで示したものです。

川崎市の空き家対策の現状と課題


矢沢たかお
次に、10款5項5目空き家対策について伺います。
 
私の地元宮前区においても、空き家に対する市民相談が増えてまいりました。
長期間管理が放置されている空き家、さらにはその状況が改善される見込みがない空き家と隣接している家や近隣住宅の方が、日々の生活を不安に感じ、強烈なストレスが積み重なっていくことは想像に難くありません。
 

本日はこういった具体例をもとに、全市の空き家対策について議論が出来ればと思っております。
 
先ず、次年度予算案として、空き家対策事業費約513万円計上されています。事業内容を伺います。併せて、本市のいわゆる「問題のある空き家」の実態を戸数と推移含めて伺います。
 
 
まちづくり局長
はじめに、空家利活用推進事業費の事業内容につきましては、地域での空家利活用を支援するコンサルタント派遣、空家の現地調査、空家所有者等への啓発などでございます。
 次に問題のある空家につきましては、消防署や区役所等からの情報をもとに構築した、平成30年4月時点で「空家データベース」に登録されている空家643戸のうち、建物に著しい破損等や樹木が著しく繁茂しているもの等は431戸となっております。また、令和2年3月時点で登録されている空家890戸のうち、建物に著しい破損等や樹木が著しく繁茂しているもの等は105戸、建物に軽微な破損がみられるもの等は411戸となっております。

 

矢沢たかお
 空き家利活用自体を否定するわけでは決してありませんし、地域の中で多くの関係者が空き家の再生と活用を推進していただけることは、地域にとって素晴らしいことだと思っています。ですが、一方で長い年月と労力をかけても解消できる空き家の件数は、年間数件。資料のように2年間で約28%増加しているペースを考えると、抜本的な部分を考えていく必要があります。さらにこの件数は、
 

「問題のある空き家」の内、空き家対策フローチャートにおいてどのフェーズにいるのか分布を伺います。また、所有者不明の空き家の件数と所有者不明の空き家が発生する理由及び、これまで特定空家等判定会議の開催件数を伺います。

 

まちづくり局長
はじめに、関係局・区による現地調査、所有者調査等の状況につきましては、来年度に調査する予定としております。
 次に問題のある空家で、所有者が確認できていないものは、平成30年4月時点で4件でございました。
次に、所有者が確認できていない空家の発生要因につきましては、相続人がいないことや、相続放棄、所有者が行方不明などが考えられます。
次に、特定空家等判定会議につきましては、開催の実績はございません。

 

矢沢たかお
 これまで、相当な件数で増加の一途を辿っている「問題のある空き家」の現状がある中で、特定空家等判定会議がまだ一度も開催された実績が無いことは、制度運用の中で大きな課題があると考えざるを得ません。特定空き家等対応フロー図をまとめたものが以下のスライドとなります。重要なことは、一度も開催実績のない判定会議に付議する前の区役所内での工程において、個々の事案がどの工程に何件あるのか、その進捗状況がどうなのかが把握されていないことです。それによって、空き家所有者に対して改善依頼等を行ってから何年もそのままとなっているケースもあるでしょうし、いつまで経っても判定会議に付議されない。付議するための区役所内会議での議題にすらならないということです。先ずは、「各区役所での取組状況の把握と推進が必要」であり、しっかり判定会議に乗せていくことが重要です。
 

 次に、経済損失について伺います。問題のある空き家が本市に及ぼす影響について、「外部不経済」や「機会損失」が挙げられます。外部不経済とは、主に経済学で使われる専門用語の一つで、市場で行われている経済活動とは別の場所で何らかの不利益が発生し、個人や法人に悪影響を与えることを言い、空き家の場合、外部不経済の代表例として「風景や景観の悪化」「ゴミなどの不法投棄」「悪臭の発生」などが挙げられます。また、機会損失については、その土地や建物を別の用途に活用した場合、生まれる便益と言い換えられると考えます。これらを本市における経済損失として定量的に計算することは出来ないのか伺います。

 

まちづくり局長
火災の発生などによる外部不経済や住宅等が利用されないことによる機会損失につきましては、現時点では、算定方法が確立されておらず、把握が困難であることから、国や他都市の動向を注視してまいります。

 

矢沢たかお
 確かに現時点では、公として機会損失・経済損失について算定されたことはありません。ですが、土地の高度利用が進み、密集している本市の状態を鑑みれば、そこに「問題のある空き家」があること自体、経済損失がうまれていることは、これまでの議論でも分かる通りです。参考として頂きたい一つの資料を紹介したいと思います。
許可を得て、東京大学公共政策大学院に通う学生が出している「空き家対策の費用便益計算」というレポートを抜粋し紹介致します。このレポートでは、空き家を解消する為に必要な「社会的費用」と、それによって得られる「社会的便益」をモンテカルロ法を用いて計算したものとなっています。空き家を撤去し、ポケットパークとして管理した場合の費用便益は1件あたり約50万円である結果となっています。この便益額は参考数値でしかありませんし、実際にポケットパークとして管理するかどうか別(当方は本市においては市場経済に戻すイメージが適していると考えています)として、行政が費用をかけてでも、空き家解消の施策を進めたほうが良いという参考になるレポートと評価しています。
「日本の経済損失」という本の著者でもある経済評論家の方も、同様のレポートを引用していますが、仮にこれを本市に当てはめてみると、本市データベース登録されている空き家890件x50万円=約4.5億円/年間の経済損失と言えると考えています。
 
 
 現状では、特定空家等対応フローが活発的に機能している状態とは言えません。本市の空き家増加数を鑑みれば、判定会議に付議される事案が頻発してもおかしくない状態であり、「問題のある空き家」については、判定会議に付議するまでの各区での取組を活性化することが重要と考えるが、見解と取組を伺う。
 とりわけ、「問題のある所有者不明の空き家」においては、速やかに特定空き家指定を進めるべきであり、判定会議に積極的に付議すべきであるが、見解と本市の空き家の対策における今後の取組を伺う。
まちづくり局長
 問題のある空家についての御質問でございますが、空家への対応につきましては詳細な状況調査の実施や、最終的には私有財産の処分等が必要となり、慎重な対応が求められているところでございます。
 また、特定空家に至らない所有者不明の空家に対しましては、相続財産管理人制度の活用が考えられます。当該制度の申立人となる者に制限があること、全ての手続きが終了するまでに日数を要し、即時での対応が困難であるなどといった課題がございますが、他都市での取組事例等を参考に制度の適用について検討してまいります。
 今後につきましては、区役所と関係局により、特定空家等対応フローに沿った的確な状況把握や、情報共有を行うとともに、「私有財産等に関する解決困難な地域課題に係る検討連絡協議会」等も、事案に即して積極的に開催しながら、課題解決に向けた最適な手法の検討に取り組んでまいります。

今後の空き家対策において重要なこと


 空き家対策については、川崎市だけでなく全国的に大きな問題となっています。2015年に成立した空き家対策特別措置法にて、制度枠は作られましたが、今回のやり取りで分かる通り、これまで一度も行政代執行まで至っていないだけでなく、その手前の判定会議にすら付議されたことがないのが川崎市の現状です。
 一方で、増え続けている空き家件数。土地の活用が進んでいる本市においては、自主的に空き家を開発によって取り壊しが進み、新たに活用している空き家ももちろん沢山あります。そういった差し引きを含め、2年間で28%増のペースで増加しているということになります。さらには、昨今の社会状況を見ればこの件数はさらに右肩あがりで増えていくことが予想されます。参考程度ではありますが、すでに年間4.5億円以上の機会損失が発生していると提言しているレポートもあります。
 今後、川崎市においては、①各区役所における「問題のある空き家」のステータス把握と進捗把握、②特定空家等判定会議に積極的に付議し対策を進めていくこと、この2点の取り組みを進めていくことが重要と考えています。
 
宮前区でも近隣の空き家で悩む方々が増えています。時間のかかる取り組みですが、全国の中でも進んだ空き家対策が施せるよう頑張りたいと思います。
本日も最後まで読んで頂き、有難うございました。
 


ABOUTこの記事をかいた人

宮前区選出、川崎市議会議員(自由民主党) A型/乙女座/丑年 菅生小・中学校→法政二高→法政大学卒業 2008年4月伊藤忠テクノソリューションズ入社 2014年7月に政治活動に専念する為、同企業を退社 2015年第18回統一地方選挙において初当選。現在二期目。 趣味:剣道四段、空手二段、書道(毛筆三段、硬筆二段)

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