令和3年度川崎市予算案について

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※2021年2月28日に放映予定の川崎市議会座談会「予算審議の前に」の撮影風景

 

 みなさん、こんばんは。川崎市議会議員(宮前区選出)の矢沢孝雄です。

 

 令和3年度川崎市議会予算案が2月8日に公表されました。今回はあくまで矢沢個人的目線ではありますが、市議会令和3年度予算についての概要やポイントについて、お伝え出来ればと考えています。予算案のポイントだけでも知ることで、川崎市がどういった方向性で進んでいくのかが見えるのではないかと思います。

 

 また、以前当方ホームページであげた「平成30年度決算について」が非常に多くの方に読まれました。この記事を読んで、「川崎市の財政状況が良く分かった!」といった反響を市民や政治関係者から頂きました。本当に有難うございます。

 

 今回は、令和3年度予算の内容ではありますが、川崎市の財政状況の根本的な課題等は継続している状況ですので、参考にしていただければ幸いです。

 

平成30年度決算から見る川崎市の財政状況について

2019.09.03

予算全体の概要

 次年度予算案の全体概要は以下の通りです。

 

  • 一般会計:8,208億円(前年度比+3.6%)※7年連続過去最高
  • 特別会計:4,680億円(前年度比△3.7%)
  • 企業会計:2,153億円(前年度比+4.1%)
  • 令和3年度全体予算額:1兆5,042億円(前年度比1.3+%)

 

 全体予算として増えているのだから、財政的にも余裕があるんじゃない?と感じられる方もいらっしゃるかと思います。市税収入がどの程度あって、どのように使わているのかを把握する為には、先ず「一般会計」の状態や内訳を理解することが重要です。

 
 
 とはいえ、特別会計・企業会計は全体予算額の45.4%を占めます。特別会計と企業会計についてもどういった内容なのかを把握していく必要があります。

 

特別会計と企業会計の構成について

 

 先ず、特別会計や企業会計とは一体どういった内容で構成されているのかについてお伝えしたいと思います。予算審査を進めていく上で、この増減の要因を当局とヒアリングしながら、今後の課題などを整理していくことも大切です。

 

特別会計予算額「4,680億円」の内訳(※13会計)

・競輪事業          : 220.9億円(前年度比△10.4%)
・卸売市場          : 22.2億円(前年度比△4.1%)
・国民健康保険事業      : 1,205.5億円(前年度比+1.2%)
・母子父子寡婦福祉資金貸付事業: 2.4億円(前年度比△7.0%)
・後期高齢者医療事業     : 173.5億円(前年度比+0.3%)
・公害健康被害補償事業    : 0.7億円(前年度比+0.3%)
・介護保険事業        : 1,036.9億円(前年度比+1.0%)
・港湾整備事業        : 38.4億円(前年度比△34.8%)
・勤労者福祉共済事業     : 1.1億円(前年度比+0.5%)
・墓地整備事業        : 5.0億円(前年度比+31.5%)
・生田緑地ゴルフ場事業    : 5.1億円(前年度比+7.5%)
・公共用地先行取得等事業   : 16.0億円(前年度比+0.4%)
・公債管理          : 1,952.3億円(前年度比△7.5%)

 

 次に企業会計の構成について見ていきたいと思います。

 

企業会計予算額「2,153億円」の内訳(※5会計)

・病院事業          : 449.9億円(前年度比+8.3%)
・下水道事業         : 996.8億円(前年度比+5.5%)
・水道事業          : 493.7億円(前年度比+2.1%)
・工業用水道事業       : 96.5億円(前年度比△3.2%)
・自動車運送事業       : 116.2億円(前年度比△7.5%)

 

一般会計予算の概要について

 続いて、令和3年度予算案における一般会計(8,208億円)の区分内訳とその特徴について、以下に記載させて頂きます。

 

一般会計予算額「8,208億円」の内訳

・市税     : 3,453.9億円(前年度比△5.0%)
・地方譲与税  : 29.5億円(前年度比△4.9%)
・交付金    : 427.8億円(前年度比△0.3%)
・地方特例交付金: 49.7億円(前年度比+132.3%)
・地方交付税  : 11.0億円(前年度比△6.2%)
・国庫支出金  : 1,466.7億円(前年度比+3.5%)
・県支出金   : 361.3億円(前年度比+2.5%)
・財産収入   : 83.8億円(前年度比+225.0%)
・繰入金    : 984.0億円(前年度比+38.1%)
・市債     : 733.2億円(前年度比+12.1%)
・その他    : 607.1億円(前年度比△4.4%)

 

令和3年度一般会計の特徴について

・市税収入▲180億円(個人市民税、法人市民税及び固定資産税の減により2年連続の減)
・収支不足は当初の見込み▲64億円から▲286億円に(平成24年度決算からの借入総額938億円)
・地方特例交付金は、新型コロナ緊急経済対策による特別交付金の新設により、前年度比29億円の増
・政令市唯一の普通交付税不交付団体から交付団体に
→普通交付税の見込みは6.5億円、交付団体となった事で臨時財政対策債を36億円を発行。
・財産収入として、学校給食費の公会計化による学校給食費徴収金が加わり、前年度比58億円の増
→これまで教職員が徴収業務を行い各学校毎に、学校給食会に納付していた給食費。徴収業務を教育委員会が行う事で、学校現場の負担減。

 

歳出予算を款別(目的別)に見ると

歳入、入ってくるお金の部分の項目と大きさは上記のとおりとなりますが、一般会計(8,208億円)の歳出(使い道)はどうなっているのか、その大枠を見ていきたいと思います。

歳出予算を款別(目的別)に見ると、健康福祉費が全体予算の19.6%(1,608億円)を占める他、こども未来費15.6%(1,277億円)、教育費13.9%(1,141億円)、公債費8.7%(712億円)、国民健康保険事業や介護保険事業などに対する諸支出金14.4%(1,181億円)となっており、この5区分で予算全体の72.2%を占めています。

 

歳出予算(目的別)内訳
 
・議会費   : 17.0億円(前年度比+0.7%)
・総務費   : 613.5億円(前年度比+14.7%)
・市民文化費 : 83.7億円(前年度比△13.9%)
・こども未来費: 1,277.4億円(前年度比+0.8%)
・健康福祉費 : 1,608.0億円(前年度比+4.3%)
・環境費   : 297.7億円(前年度比+18.8%)
・経済労働費 : 330.8億円(前年度比+44.4%)
・建設緑政費 : 253.8億円(前年度比△42.9%)
・港湾費   : 123.4億円(前年度比+19.1%)
・まちづくり費: 204.7億円(前年度比△16.5%)
・区役所費  : 184.4億円(前年度比+5.2%)
・消防費   : 173.3億円(前年度比+1.0%)
・教育費   : 1,141億円(前年度比+12.8%)
・公債費   : 711.9億円(前年度比△0.4%)
・諸支出金  : 1,180.5億円(前年度比+5.8%)
・予備費   : 7.0億円(前年度比+40.0%)

 

上記のような内訳を見ると、更にその内訳が知りたくなってくるかと思いますが、到底記載してきれるものではない為、ここでは一般会計全体がどのような部分に大きく使われているのかを把握する程度にしていただければと思います。

 

あくまで私自身の話ですが、この区分と大雑把な局毎の予算感を頭に置くだけで、一つ一つの事業や財産に対して、どこが所管しているのかであったり、局の中での事業の重み付けのようなものを強く意識するようになりました。

 

令和3年度の予算に対する所感

 さて、話を戻して川崎市財政の収支不足について考えていきたいと思います。

 

 減債基金からの借り入れ額がやはり凄い事になっています。
減債基金とはどういったものなのか、なぜ減債基金を活用せざるを得ないのか、市債の発行など他の財源は考えられないのか?といった内容については、上記でも紹介した「平成30年度決算について」と重複してしまう為、ここでは割愛させて頂きます。興味関心のある方は是非御覧ください。

 

 先ず、川崎市では当面の収支見通しを把握するために、収支フレームというものを作成しています。直近では平成30年に作成しているのですが、その時点ですでに、令和3年度は64億円の収支不足が予測されていました。そのマイナスを埋める為に、将来の市債償還に備えて積立を行っている減債基金からの取り崩しに頼った赤字運営が常態化していました。

 

 そこにきて、今回の感染症の影響があります。当初64億円と見込んでいた収支不足は286億円にも及びました。減債基金からの切り崩しに頼った予算編成となっていますが、新型コロナ対策はさらなる充実が必要であり、今後の社会変容に対応する為の投資も重要です。

 

 そういった意味で、益々厳しくなった財政運営の中で、諸課題と向き合っていかなくてはならない難しい予算編成になった印象を矢沢個人は受けました。

 

令和3年度予算編成の注目事業

 この記事で予算編成のすべてを書くとそれこそ膨大なボリュームとなってしまいますし、川崎市が公表している資料を見て頂ければ分かることなので、ここではあくまで個人的な注目事業を一つだけ挙げさせて頂きたいと思います。

 

 やはり「新型コロナウイルス感染症対策やワクチン接種業務」が最優先課題に挙げられます。新型コロナ感染症対策として、「市民・事業者への支援」「感染症対策」「社会変容への対応(行政デジタル化等)」として、217億円の予算が組まれています。
 この点についてはまた別のタイミングでお伝え出来ればと思っていますので、今回は「新たな生活様式や急変する社会環境」への対応する為の投資として、スピード感を持った対応が求められる「行政手続のオンライン化」についてご報告させて頂きます。

 

行政手続のオンライン化について

 

 行政手続オンライン化は、押印・署名手続を順次廃止していきながら、川崎市全2,500あるとされる業務手続を令和4年度末を目処に原則オンライン化を進めていくものです。
 感染症対策といった観点もありますが、市民の利便性が向上する大切な事業です。市役所・区役所に行って順番待ちをして、届出手続や証明書発行などを行っていた流れが、将来的にはこういった「業務手続」は、場所を問わず進められる時代がすぐそこまで来ていると考えています。

 

 そして、これからの市役所や区役所等は、複雑化・複数の部署に跨るような市民相談などにしっかりと対応出来るよう相談機能に重きを置き、加えて地域の賑わいを生み出せるそういった交流拠点としての機能などが積極的に求められるようになるのではないかと考えています。

 

 他方、デジタルデバイド対策、中々オンラインといわれても難しいという方々も多くいらっしゃいますので、そういった方々にとって不便であり、不利益とならないよう取組が必要ではありますが、既存の業務を最適化していく大きなきっかけになる重要なテーマとなっています。

 

 今議会には、国の第3次補正予算に応じた川崎市令和2年度補正予算議案も提出される予定となっています。勿論内容は、新型コロナ対策を中心としたものになります。1月27日に全国に先駆けて実施した川崎市のワクチン接種訓練はNHKを始め、多くのメディアでも放映され注目されました。

 

 円滑なワクチン接種体制の確立に関して、地域のかかりつけ医の先生方からもいくつか話を受けていますし、市民の関心が最も高いところだと思います。先般公表されたワクチン接種基本方針の内容も今後議会で取り上げつつ、新型コロナ対策については行政・議会共に協力しながら進めていく必要があります。

 

 今回は予算概要についてお伝えしましたが、自治体の財政状況は予算に加え、決算もまた重要となってきます。様々なツールを活用しながら今後もご報告していきたいと思います。本日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 


ABOUTこの記事をかいた人

宮前区選出、川崎市議会議員(自由民主党) A型/乙女座/丑年 菅生小・中学校→法政二高→法政大学卒業 2008年4月伊藤忠テクノソリューションズ入社 2014年7月に政治活動に専念する為、同企業を退社 2015年第18回統一地方選挙において初当選。現在二期目。 趣味:剣道四段、空手二段、書道(毛筆三段、硬筆二段)

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