みなさん、こんばんは。川崎市議会議員(宮前区選出)の矢沢孝雄です。
川崎市議会第1回定例会が3月19日に閉会となりました。
その同日、令和2年度の「文書共有システムプロジェクト報告(議会ペーパレス化)」を議長、副議長に行いました。平成28年度からスタートした本プロジェクト、これまで39回重ねてきた会議に自民党会派を代表して取り組んできました。
- 本プロジェクトには自民党、公明党、みらい、共産党、超党派から選出されています。
- 議長、副議長に対して令和2年度のプロジェクト活動報告を実施。
振り返ると、タブレット端末を始めとするシステム自体を導入するか否か、費用対効果はどうなのか、導入するのであればどういったシステムと端末で、その契約形態、どのような段階を経て議会への導入を図っていくのか等。自民党代表議員として多くの諸課題と向き合いながら、ほぼほぼ完結というところまで来ました。
そこで、今回はこのプロジェクトを振り返って、当初の目的と照らし合わせて成果はどうったのか。こういったこともしっかりとご報告していきたいと思います。
川崎市議会文書共有システムプロジェクト(議会ペーパレス化)経緯
文書共有システムに関する検討プロジェクトは、平成28年3月に文書共有システムの本格導入に向けた慎重かつ詳細な検討、協議を行うことを目的として、団長会議の決定により設置され、各会派から選出されたメンバーのもと、様々な検討課題等について協議を進めてきました。
どの自治体でも課題となるのが、どこまでの範囲をどういったステップで進めていくのかだと思います。川崎市議会の場合、以下のようなステップで進めていきました。
システムの用途 | 試験運用 | 本格運用 |
---|---|---|
常任委員会等の委員会室における会議 | 平成30年3月~ | 平成30年9月~ |
執行機関からの情報提供資料 | 平成30年11月~ | 平成31年2月~ |
本会議等の議場における会議 | 令和2年2月~ | 平成2年9月~ |
なぜ試験運用を設けたのか?試験運用から本格運用までの時間の考え方や、そもそもここまで時間がかかるものなの?と考えるかもしれません。
以前も記事として取り上げていますが、このプロジェクトで最もといっても良い程、大切なことは「議員の理解を得ながら進める」ということです。
理由は簡単です。現職議員60名の中には様々なご意見を持つ方がいて、共通項として「デジタルネイティブではない」ということです。それは現在35歳、こうして日々活動報告の記事を書いている私自身も含めてです。そして、「紙の方が様々な面で良い」と考える議員が圧倒的に多いということです。
やる必要が無いなら紙のままの方が良い。と考えるのが通常です。民間企業であれば、トップの意向で加速度的に取組が進みますが、議会の場というのは市民の代表が集まり、民主的に物事を進める場です。だからこそ、プロジェクトを進めるためにはその理由となる大義名分が必要ですし、この背骨が固まっていないと、理解をしてくれない議員への説得が出来ません。
なので、単に”紙を無くすために”タブレット端末や文書共有アプリを導入するでは通らないのです。”市民に還元できるほどの費用対効果が見込めるから”という理由にこだわって進めました。議員の生産性向上も重要ですが、目に見え、公表できる費用対効果を最も重要な部分に置いて本プロジェクトを進めてきました。
本プロジェクトの成果
本プロジェクトの成果を以下に記載していきますが、どの数字も川崎市議会局が公式に報道発表している数字であり、公表資料をそのまま添付させて頂きます。となっています。プロジェクト当初に見込んでいた数字を遥かに上回る成果が確認できるかと思います。
3月19日に報告した資料は以下URLからご覧いただくことができます。
令和2年度文書共有プロジェクト報告書
上記報告書の中でも、具体的な成果として報告している部分を抜粋致します。
「印刷枚数:約98.7万枚の削減、作業時間:1,221時間の短縮」
いずれも1年間での数字となります。単純に費用換算はすることは難しいことですが、もし仮に紙一枚10円で試算すると年間約987万円、市職員時給を2,300円で試算すると年間約285万となります。合計すると、約1,170万円/年の削減効果が出るという計算になります。
一方で、システム導入費用はどうなっているのかを見てみると、上記添付した報告書にも記載されていますが、iPad pro(リース)+文書共有システム(クラウド)+通信関係費の合計で、年間4,922,484円となります。費用対効果の面からみても十分効果があったと考えています。
さらに、定性面での効果としては、これまで多くが対面での報告だった行政側からの情報提供は文書共有システムを使って、一斉情報提供となった為、議員側にとってはすぐに場所に問わられず情報にアクセスができ、関心の強い情報を取捨選択して得ることができるようになりました。理事者側からしてみると、議員控室を回って個別に報告を重ねていたものが、本当に重要な情報以外は、情報発信による提供となったことで作業時間が大幅に削減されました。
また、時系列で情報提供資料は整理されている為、あとになってアクセスしやすいというのもメリットです。
さらに、本会議や委員会資料などもきれいに整理されている為、「あの時の常任委員会で報告のあったあの資料」というのが探しやすくなりましたし、カラーで保存ができるようになりました。データ化されている為、他の人間への情報共有も容易です。
こうった定量面、定性面さまざまな部分で効果が出ています。議会への導入は考えているほど容易ではありませんが、全国の議会で投資対効果の見合う形で導入を進めていただきたいと思います。
今後の課題
今後の課題についても最後に少し触れたいと思います。以下、点の項目については今後のプロジェクトでの引き続き検討課題となってきます。
①議案書等、一部資料の議場における会議での取扱い
②契約更新に伴うタブレット端末機等の仕様等の見直し
上記①については、きっと改選(選挙後の新しい体制)でないとこれ以上の紙撲滅は難しいと考えています。やはり、どこまでいっても12.9インチの画面で表現できる内容は人によって限界があると感じてしまう方もいるからです。川崎市議会でも最後の最後まで残っているが、予算資料、決算資料です。現在は、紙資料も従来通り用意しながら、電子化も行っています。
一冊の分厚い本のような予算・決算資料については、長年染み込んだ使い方が議員ごとにあります。付箋の貼り方、マーカーの引き方等。付箋もマーカーもデジタルで出来ますが、やはり馴染まないという方もいらっしゃいます。
ですが、大切なことは「継続」と「蓄積」だと思っています。
始めたばかりでは慣れないものも、数年間継続していくと便利に使えるようになっていきます。また、予算や決算に関する数字の情報も蓄積していくことでその推移を容易に調べられるようになり数字に価値が出てきます。なので、この「継続」と「蓄積」の観点を大切にして、今後も進めていただきたいと思っています。
丸4年以上にわたって取り組んできましたプロジェクトですが、上記の課題が残りつつも、ほぼほぼ完結までの道筋が整ったと考えています。
一言に申し上げて大変恐縮ですが、本プロジェクトは大きな成果をあげた議会改革の成功事例といって良いものです。
まだ課題は続きますが、今年度をもって自民党会派代表は別の議員にバトンを引き継ぎます。
とはいえ、後任にも(厳しく)言われていますので、今後もサポートしながら、また別の角度から、「市民に利益として還元される議会改革」を進めていきたいと思います。
本日も最後まで読んで頂き、有難うございました。