みなさん、こんばんは。川崎市議会議員(宮前区選出)の矢沢孝雄です。
今回は川崎市の将来を担う臨海部の視察報告となります。
さまざまなところで、発表がされている為、市民であれば一度は聞いたことがあるかもしれませんが、JFEスチール東扇島製鉄所の高炉休止をきっかけに、JFEが所有している広大な敷地の今後の活用について川崎市を巻き込んだビッグプロジェクトが進行しています。
本ブログでは、そのプロジェクト自体のことを伝えるわけではありませんが、川崎市の今後100年を形成していくといっても過言ではないものとなっています。
そういった大きな転換期を迎える川崎臨海部において、今回視察を行なったのが、「Jサーキュラーシステム」のプラスチックリサイクル工場の現場です。
先輩議員である、橋本勝議員(多摩区選出)のご紹介もあり、有志メンバーでの視察が組まれました。
若干、固めの視察報告となってしまうことを先に謝っておきます🙇♂️
私自身も視察で初めて知ったことも多々あり、後追いで勉強することでまとめている部分もあります。その為、ちょっと報告書っぽくなってしまっています🙇♂️
因みに、今回のダイジェスト(最も市民に伝えたい部分)については、当方のYoutubeでも掲載しましたので、そちらもご覧いただけたら嬉しいです。
目次
1.施設・事業の概要
Jサーキュラーシステムは、2023年4月に設立され、川崎臨海部の水江地区を拠点として、家庭や事業所から排出される廃プラスチックの中間処理と、リサイクル原料の製造を行っています。
主な事業は、次の2つです。
高度選別・マテリアルリサイクル向け事業
家庭から回収されたプラスチック資源について、プラスチック以外の異物を除去し、材質や性状に応じて選別しています。
マテリアルリサイクルに適したプラスチックについては、粉砕してフレーク状にした後、外部のコンパウンド事業者などに供給し、ペレットや再生プラスチック製品の原料として利用しています。
ケミカルリサイクル向け原料製造事業
マテリアルリサイクルが難しい混合プラスチックなどについて、異物を除去した後、圧縮・成形して「RPF」またはケミカルリサイクル向けの原料として供給しています。
供給先としては、JFEスチールやレゾナックなどがあり、製鉄所の副原料、コークス炉化学原料、アンモニア、水素、油、ガスなどの原料として活用されています。
Jサーキュラーシステム自体が最終製品まで製造するというよりも、リサイクル事業者が利用しやすい状態に廃プラスチックを選別・加工し、原料として供給する中間的な役割を担っています。
2.施設の処理能力と稼働状況
施設全体の処理能力は、年間約6万トンと説明をいただきました。
内訳はおおむね次のとおりです。
- 高度選別・中間処理ライン:約2万トン/年
- ケミカルリサイクル向け原料製造ライン:約4万トン/年
視察時点での処理状況は、
- 高度選別ライン:約1万トン程度
- ケミカルリサイクル向けライン:約2万4,000トン程度
であり、ケミカルリサイクル向けラインについては、処理能力の約6割程度の稼働状況との説明がありました。
事業として安定的に利益を確保するには、単価などの条件にも左右されるものの、概ね80%程度の稼働率が必要とのことです。
その為、稼働率を上げていく為の取組が必要とのことでした。
3.川崎市との連携
川崎市では、家庭から出るプラスチック製容器包装に加え、バケツ、ハンガー、収納用品などの製品プラスチックも一括して回収する取組を進めています。
中原区と幸区で回収されたプラスチック資源については、Jサーキュラーシステムの高度選別ラインに直接搬入され、異物除去や材質選別が行われており、
その他の区で回収されたプラスチックについては、市の処理施設で中間処理された後、一部がJサーキュラーシステムのケミカルリサイクル向けラインに搬入されています。
川崎市は、プラスチック資源循環促進法第33条に基づく再商品化計画について国の認定を受けており、Jサーキュラーシステムなどと連携し、回収したプラスチックをマテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルにつなげる仕組みを構築しています。
実は、この第33条に基づく国の認定を受けている自治体は全国的にも僅かです。(この第33条がどういったものなのかについては後述)
川崎市が実施するプラスチック資源化事業において、Jサーキュラーシステムはその委託先として、重要な役割を担っています。
4.法第32条ルートと第33条ルートの違い
従来の容器包装リサイクル法に基づく仕組みでは、自治体が回収・中間処理したプラスチックを日本容器包装リサイクル協会に引き渡し、毎年度の入札によって再商品化事業者が決まります。
この方式では、毎年度入札が行われるため、継続的に同じ事業者が処理できるとは限らず、事業者側にとっては処理量や収益の見通しを立てにくいというのが課題でした。
一方、プラスチック資源循環促進法第33条に基づく大臣認定では、自治体と中間処理事業者、再商品化事業者が連携して、最長3年間の再商品化計画を国に申請します。
認定を受けることで、一定期間の処理量を見込むことができ、事業者側にとって設備運用や事業収支を計画しやすくなる点が大きなメリットとされています。
「自治体と中間処理事業者、再商品化事業者が連携して」と簡単に記載しましたが、その事業強化を最大化させる為には、すべてのプレイヤーが集積していることが重要です。
それが、川崎市臨海部ということですね。
5.マテリアルリサイクルとケミカルリサイクル
マテリアルリサイクル
比較的品質が良く、材質を選別しやすいプラスチックについては、粉砕、洗浄、フレーク化、ペレット化などを行い、再びプラスチック製品の原料として使用します。
ただし、家庭から回収される容器包装プラスチックには複数の材質が混在しているため、すべてを元と同じ容器包装に戻すことは難しいのが現状とのことです。
再生材は、コンクリート型枠、物流資材、建材、パレットなど、一定の品質で利用できる製品に使われることが多いそうです。
ペットボトルは、PETという比較的単一の材質で回収されるため、ボトルからボトルへの水平リサイクルが実現しやすい。一方、混合プラスチックを同じ容器包装に戻す水平リサイクルは、現時点では技術的な難しさがあるとのことでした。
ケミカルリサイクル
複数の材質が混ざっているものや、マテリアルリサイクルに適さないプラスチックについては、化学原料や製鉄原料として利用する。
JFEスチールでは、石炭とともにコークス炉へ投入し、油、ガス、化学原料などを回収する。
投入割合は石炭約99%に対してプラスチック約1%程度であるが、製鉄所全体の処理規模が大きいため、プラスチックの使用量も年間数万トン規模になる。
レゾナックでは、廃プラスチックをガス化し、アンモニアや水素、炭酸ガスなどの原料として利用している。
正直、説明を聞いただけでは、市民目線で、どのプラスチック容器がマテリアルなのか、ケミカルなのかは分からないと思います。
当然私自身も分かりませんでしたが、身近な例で少しだけ挙げると、ペットボトルのキャップはマテリアルで、ポテトチップスの袋はケミカルって感じでしょうか。
市民は、どのプラがマテリアルなのか、ケミカルなのかについては、全く意識する必要はないとのことでした。
6.リサイクルできないプラスチック
回収されたプラスチックの中には、塩素濃度が高いもの、金属が混入しているもの、リチウムイオン電池を含むものなど、マテリアルリサイクルにもケミカルリサイクルにも適さないものがあるとのことです。
これらについては、現状では熱利用に回し、発電事業者や製紙会社などで燃料として活用しています。
したがって、「プラスチックをすべて同じ方法で再生している」ということではなく、
- マテリアルリサイクル
- ケミカルリサイクル
- 一部は熱回収
に振り分けているのが実態とのことです。
7.家庭での汚れの落とし方
改めてとなりますが、家庭から出すプラスチックについては、マテリアルリサイクルかケミカルリサイクルかを市民が判断する必要はありません。
中身を使い切り、食べ残しなどの大きな残渣を取り除いた上で、可能であれば軽くすすいで出すことが望ましいです。
お菓子の袋などは、中身を使い切り、粉や食べ残しを落とせば、必ずしも完全に洗浄する必要はありません。
マヨネーズや調味料の容器についても、中身を使い切れば回収対象になり得ます。一方で、中身が大量に残っているものは適しません。
弁当容器については、ソースや油が多少付着している程度であれば、残飯を除去した上でプラスチック資源として出すことは可能です。但し、きれいに洗浄されている方が、高品質なリサイクル原料として利用できる可能性は高まります。
汚れが多いものは、高度選別工程でマテリアルリサイクルに適さないものとして除外され、ケミカルリサイクルまたは残渣処理に回る可能性が高いとのことです。
8.市民に求められること
施設側からは、事業の稼働率とリサイクル率を高めるため、市民に求められる行動として次の点をあげていただきました。
- 普通ごみとプラスチック資源を正しく分ける
- 中身を使い切ってから出す
- 食品残渣などを可能な範囲で取り除く
- ペットボトルはラベルとキャップを外す
- リチウムイオン電池や小型充電式機器を混入させない
- プラスチックに見えても、電池を内蔵している製品は別ルートで排出する
特にリチウムイオン電池は、収集車や処理施設での発火事故につながるため、大きな課題となっている説明を受けました。
実際に行った工場視察では、リサイクル現場でリチウムイオン電池が混ざることでどのような事態となるのかについてもご説明頂きました。(Youtube参照)
事業として見た際、プラスチック資源を普通ごみに入れてしまう市民が一定数存在することから、分別率の向上が施設の稼働率向上と事業の採算性に直結するのが現実です。
9.事業採算とキャッシュポイント
Jサーキュラーシステムの主な収入源は、次のようなものと考えられます。
- 自治体や民間事業者から受け取る処理委託料
- 選別・加工した再生プラスチック原料の販売収入
- ケミカルリサイクル向け原料の供給収入
ただし、再生プラスチックは、バージンプラスチックに比べて品質が安定しにくく、製造した再生材が必ずしも高価格で販売できるとは限らないと思われます。
施設側からは、事業採算を確保するには一定以上の稼働率が必要であり、目安として80%程度の稼働が必要との説明もありました。
現在は処理能力に余裕があり、川崎市以外にも大田区、藤沢市、横須賀市、町田市など、他自治体からの受入れ拡大を進めているのですが、そこにも現状の法整備での限界があり、次のような課題に直面しています。
10.自治体ごとの区分管理という課題
第33条認定に基づく事業では、自治体から搬入されたプラスチックについて、原料、中間処理残渣、再商品化製品まで、自治体ごとに区分して管理することが求められています。
そのため、川崎市分、大田区分、その他自治体分を混ぜずに処理し、製造したベールや原料についても自治体ごとに保管・管理する必要があります。
しかしながら、プラスチックの品質は自治体ごとに大きく異なるとは限らず、区分管理によって設備を連続稼働できないため、実際には設備能力の3分の1程度しか活用できない場面もあるそうです。
この区分管理が、施設の稼働率低下、保管場所の制約、運用コストの増加につながっています。
では、この課題に対してどのような取組を行なっているのでしょうか。
11.環境省モデル事業
Jサーキュラーシステムでは、環境省のモデル事業として、複数自治体のプラスチックを混合して処理しても、品質や再商品化に問題が生じないことを検証しています。
川崎市と大田区のプラスチック約20トンを混合し、中間処理、ベール化、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルの各工程において、単独処理の場合と品質差がないかを調査しているとのことです。
検証項目には、
- 混合前後のプラスチック組成
- 製品プラスチックや残渣の割合
- 選別後の品質
- ベールの組成
- 再商品化後の原料品質
などが含まれます。
要は、自治体によって、プラスチックゴミの品質に顕著な差が出るということは無いよねということを検証していると理解しています。
川崎市民と大田区民とで、排出するプラごみ品質に差が出るとは考え難いですよね。
仮に自治体ごとの区分管理を緩和し、複数自治体のプラスチックをまとめて連続処理できるようになれば、現在の約3倍程度まで処理量を増やせる可能性があるとの説明もありました。
この実証結果を踏まえ、今後、国の運用ルールや制度の見直しにつながることが期待されています。
12.プラスチック排出量の将来
今後、人口減少や容器包装の薄肉化、プラスチック使用量の削減によって、1人当たりのプラスチック排出量は減少していく可能性があります。
実際に、メーカー各社の改善は進み、お菓子の袋などは以前より薄くなり、使用するプラスチック量を減らす取組が進められています。
一方で、現在も多くの自治体ではプラスチックが焼却処理されており、リサイクルされていません。冒頭でもお伝えした通り、川崎市のような自治体は圧倒的少数なので、潜在的な量は大きいと考えられています。
長期的にはプラスチック排出量が減少するとしても、当面は焼却からリサイクルへの転換を進める余地があり、Jサーキュラーシステムのような施設の社会的必要性は高いと、当方は認識しています。
13.視察を通じた主な課題と示唆
今回の視察・意見交換から、次の点が重要であると認識致しました。
分別率の向上
施設の処理能力には余裕がある一方、普通ごみに混入して焼却されているプラスチックが多い。市民への分別啓発を強化し、回収量を増やす必要がある。
リチウムイオン電池対策
電池内蔵製品の混入は、火災事故の原因となる。プラスチック製品であっても電池を含むものは別に排出することを、より分かりやすく周知する必要がある。
汚れの基準の明確化
「軽く洗う」「中身を使い切る」という基準は、市民にとって判断が難しい。弁当容器、納豆容器、調味料容器など、具体例を示した周知が必要である。
再生材需要の創出
再生材を製造しても、利用する企業や市場がなければ循環は成立しない。行政による再生材の優先調達や、企業との連携による需要創出が重要である。
区分管理ルールの見直し
自治体ごとの厳格な区分管理が、施設の稼働率と採算性を低下させている。トレーサビリティーを確保しつつ、複数自治体のプラスチックを混合処理できる制度への見直しが求められる。これは国に対する要望箇所となります。
14.最後に
Jサーキュラーシステムは、川崎臨海部に集積する製鉄、化学、プラスチック、家電、ペットボトルなどのリサイクル産業と連携し、廃プラスチックを資源として循環させる中核的な施設です。
マテリアルリサイクルに適したものは再生プラスチック原料にし、難しいものは製鉄・化学産業の原料としてケミカルリサイクルすることで、焼却処理を減らす仕組みを構築しています。
一方で、施設の稼働率、再生材の販売先、自治体ごとの区分管理、家庭での分別率、リチウムイオン電池の混入など、事業を持続可能なものとするための課題も多いのが現状です。
今後は、市民の分別行動を促進するとともに、複数自治体での広域的な処理、制度の合理化、再生材需要の創出を一体的に進めることが、プラスチック資源循環と事業採算の両立に不可欠であると考えています。
今回も長文、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
また次回もどうぞ宜しくお願い致します。













