みなさん、こんばんは。川崎市議会議員(宮前区選出)の矢沢孝雄です。
さて今回も前回に引き続き、視察報告です。
今回は、民生委員・児童委員の活動を支援する「ICTシステム」の先行導入事例(旭川市)についてご報告致します。
目次
地域を支える民生委員・児童委員の現状
民生委員・児童委員のみなさんは、地域の中で困りごとを抱える方々に寄り添い、行政との橋渡し役を担ってくださるボランティアの方々です。川崎市においても、高齢者の見守りや子育て支援など、その役割は年々重要度を増しています。
しかし、現在その現場は非常に厳しい状況にあります。
旭川市と川崎市に共通しているのは、「なり手不足」と「負担の増加」です。特に定数に対する実員の割合(充足率)の低下は全国的な課題であり、一人ひとりの委員が抱える負担が限界に近づいています。
- 川崎市:74%
- 旭川市:92.6%(令和7年12月時点)
なぜ、活動が「負担」と感じられてしまうのか?
負担と感じる点はさまざまあるのですが、民生委員の活動において、実は多くの時間を占めているのが「事務作業」です。
日々の訪問活動の記録、月ごとの活動報告書の作成、そして膨大な紙資料の管理。これらはすべて「アナログ」で行われてきました。
例えば、活動報告をするために、手書きの書類をわざわざ役所まで届けに行かなければならない。この「報告のための移動」や「二重三重の事務」が、委員のみなさんの意欲を削ぎ、心理的なハードルを高めてしまっている現状があります。
- 手書きの記録: 訪問や相談のたびに、分厚い冊子に活動内容を細かく記入。
- 電卓での集計: 月末になると、その手書きの記録を「正」の字で数え、電卓で合計を算出。
- 手渡しでの報告: 集計した報告書を、地区の会長さんに直接手渡しで報告し、さらに会長さんが全員分を合算。
これまでのやり方から脱却すると言えば聞こえは良いですが、デジタル化といっても”抵抗がある””我々には使いこなせない”と感じる方は少なくなく、全国的に求められていながらも、あまり進んでこなかったというジレンマがあります。
そういった中で、旭川市は数少ない先行自治体と呼べる都市となっています。
国が推進するICT活用と旭川市の挑戦
こうした事態を受け、国においては、主に厚生労働省(およびその設置した検討会)が、民生委員・児童委員の活動におけるICT活用について、以下の通り、具体的な見解を示しています。
- 厚生労働省(国検討会)による方針表明
2024年(令和6年)6月28日に開催された国の検討会資料において、「担い手確保に関する施策の方向性」としてICTの活用が明記。そこでは、委員が必要と考える業務や、負担軽減を希望する業務のオンライン化を図る必要があると指摘された。 - ICT活用の目的と重要性
国は、ICTを活用することで**「多様な主体が委員活動に関われる機会の創出」と「既存の委員の業務負担軽減」**の両立を目指している。デジタルツールの導入を「選択肢を増やす観点」から進めることが重要であるとの見解を出しており、これが現在の各自治体によるICT化推進の根拠となっている。 - 報告・統計業務との関連
民生委員が日々作成する活動記録は、最終的に厚生労働省が集計し、「福祉行政報告例」として公表されている。国は、こうした報告業務の基盤となる活動記録が各種福祉施策の企画・立案に不可欠であると考えており、その正確性や効率性を高める手段としてもICTの活用が期待されている。
深刻化するなり手不足への対策として、「スマートかつ充実した委員活動ができる環境整備」のためにICTを積極的に活用すべきであるという明確な方向性を示しています。
こういった方針も相まって、今回視察した旭川市は、国の予算を積極的に取りにいき、全国に先駆けて真っ向から取り組んでいました。
- ポータルサイト「クローバー」: スマホで活動を入力するだけで、件数が自動集計されます。
送信ボタン一つで報告が完了するため、電卓も報告書の持参も不要になりました。 - AI FAQシステム: 「補聴器の補助はある?」といった質問をAIに投げかけると、市の膨大なマニュアルから瞬時に回答を探してくれます。
- 民生委員が日頃使っている活動記録表
- 中身はこうなっており対応履歴を一つ一つ記載するようになっている。月末に集計。
- 旭川市の民生委員全員がアクセスできるクローバーシステム画面①
- クローバーシステム画面②
- クローバーシステム画面③
- AIを活用したQ&Aシステム画面①
- AIを活用したQ&Aシステム画面②
ICT導入によって活動はどう変わったのか?
実際にシステムを使った委員さんへのアンケートでは、94%が「負担が軽減された」と回答。
最初は「自分に使いこなせるか」と不安を感じていた方も、一度覚えると「もう紙には戻れない」と言うほど、活動がスムーズになったそうです。
AIへの質問も年間で約1,000件に達し、現場でしっかり活用されていることがわかりました。
また、情報の精度が上がったことも大きなポイントだったとのことです。
記憶が鮮明なうちにその場で入力できるため、報告内容の漏れや間違いが少なくなり、さらに、事務局側でも活動状況をリアルタイムで把握できるため、「特定の委員に負担が偏っていないか」といった組織運営上の管理も容易になったとのことです。
見えてきた課題とデジタルへの不安
もちろん、すべてが順調なわけではありません。
現在の課題として挙げられたのは、やはり「デジタル機器への操作不安」です。民生委員のみなさんは高齢の方も多いため、最初から全員が使いこなせるわけではないとのことです。
旭川市では、丁寧な操作説明会の実施や、フォローアップ体制を構築することで、この壁を乗り越えようとしていました。「便利になるから使う」のではなく、「活動が楽になり、より良い支援ができるようになるための手段」であることを浸透させることが重要と感じました。
また、AIによるQ&Aシステムについては、実際に実機を使わせていただいた上で感じたこととして、最新のAI情勢に追い越されてしまっている感は否めませんでした。
すでに我々の社会には、最新AIツールが浸透してきています。
当時、旭川市がAIによるQ&Aシステムを構築企画していた時点では、画期的なことだったのかもしれませんが、近年の急速なAIの発展と社会への浸透によって、使い勝手や性能といった意味でも追い抜かされてしまっており、クローズドな旭川市のシステムでは逆に使い勝手が悪く、寧ろ、既存のChatGPTやGeminiなどのツールを使った方がより便利に使えるのでは?とすら感じてしまう状態でありました。
一方で、現行の紙媒体を中心に行なっている委員の活動をデジタル化するためのシステムであるクローバーシステムは川崎市でも直ぐに導入しても良いのではないかと感じました。
質疑応答の様子
「新聞が溜まっている家への声掛けのコツ」といった、マニュアル化しにくい知恵をいかにデータ化するかが焦点です。テクニックというよりは、市が一方的に作るのではなく、委員の皆さんに「自分たちのノウハウを次世代に繋ぐんだ」という「わがこと感」**を持ってもらうよう働きかけています。
川崎市への示唆:私たちの街で何ができるか
川崎市では、まだこうした民生委員児童委員向けの包括的なICT支援システムは導入されていません。しかし、今回の視察を通じて、もはやICT活用は「あれば良いもの」ではなく「不可欠なもの」であると確信しました。
川崎市においても、民生委員の平均年齢は上昇し、欠員も目立ち始めています。
このままアナログな手法に頼り続けては、担い手不足への対策が進まないだけでなく、地域のセーフティネットが崩壊しかねません。
AIによるQ&Aシステムは兎も角、クローバーシステム的なものは、現場の声にしっかりと耳を傾けながら、操作しやすいインターフェースの選定や、川崎独自のニーズに合わせた機能のカスタマイズを検討していく必要があると考えます。
今回の視察で得た知見を活かし、川崎市の地域福祉がより持続可能なものとなるよう、議会の場からしっかりと提言してまいります。
今回も最後まで読んで頂き、有難うございました。では次回もまた宜しくお願い致します。

















